this year

「2002年」

僕はなにを得て、なにを失ったのだろう...

今年はかなり劇的にいろいろなことがあった。まず、それまでの三年に及ぶ孤独で退廃的とも言える自堕落な生活に終止符を打ち、社会に復帰した。僕をそれなりに評価して拾ってくれた今の会社には感謝することしきりである。なにしろ、それまでは田舎の不動産屋にまで履歴書を送って、しかも書類で落とされてたりしてたのだ。もう僕なんかを雇ってくれる会社はどこにもないのだ、と思っていた。ほぼ将来に関しては絶望的になっていたし、投げやりにもなっていた。もう小説を書いて、新人賞でも取るしかないのだ、と思っていた。

秋には、十六年住んだ用賀のアパートから引っ越した。案外と根っこのところで保守的な僕には、ずいぶんな決断だった。もっとも、日の当たらない、黴臭い部屋にいい加減うんざりしていたことも確かだが。環境がよくなり、分不相応に広くなると言えども、東京都民というものを捨てて、隣の県に移るというのは、それなりに抵抗はあった。実を言うと、いまだによかったのかどうなのか判断がつかない。

一方でそれなりに失ったものもある。僕が多大なストレスにようやく慣れて、会社というものにようやくなじんだころ、それまでの僕の孤独な生活を精神的に支えてくれていた彼女が去っていった。隣県に引っ越すきっかけともなった、その後に付き合った彼女には引っ越して一ヶ月で振られてしまった。結局、この一年で完成した小説はひとつもなかった。

もうあと数時間で、今年も終わりだ。結局、人生なんてこんな風になにかを失っていくことの積み重ねだ。その代わりに得るものもある。それらを天秤にかけて比較することなど意味がない。だいたいにおいて、失ったものの方が大きく感じるものである。たぶん、僕らは失った分だけのものを得ているのだ。そう思わないとやりきれない。現に、刻一刻と僕は若さを失っているわけだから。

来るべき年、僕はなにを失って、なにを得るのだろう? 誰と出会うのだろう?

written on 31st, dec, 2002

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