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「空白色」

...

僕は何も知らない。
ここがどこで、自分が誰なのかも。
もちろん、あなたの気持ちも、あなたが何を考えているかも。
自分が子供のころに思い描いていた未来を今生きていることすら忘れてしまう。
不思議なことに、忘れること自体は苦痛じゃない。
だから僕が苦しいのは、忘れたからじゃないんだ。
どうして左手の手首が痛いのか分からない。
誰かが「お前は何も知らなくていい」と言ってくれたら少しは楽になるのだろうか。

久しぶりに、地平線に落ちる夕陽を見たのは昨日だったか一昨日だったか。僕が見たのは夕陽であって夕焼けではない。それはなんとも言葉に出来ない不思議な色をしていた。ノスタルジックで非現実的な色だった。太陽はやけに大きく見えた。

ロジックは捨てよう。
論理的に話せばいいってもんじゃないから。論理的に話すには曖昧さを排除しなければならず、したがって言葉は記号と同じ役割しか持たず味気なくなってしまう。

言葉のない辞書。言葉のない物語。
世界が色褪せて見えるのは、世界が主観的に存在しているからだ。

本質だけを見るんだ。
だが、本質を知って一体どうなるというんだ?
何も知らない僕が、こんな風に言葉を書き連ねて、一体何になるっていうんだ?
言葉を掻き集めてシャッフルして。

僕が本当に知りたいのは何なのか?
僕はたぶん、この目の前にある空白を、言葉で埋め尽くしたいわけじゃないんだ。
僕はそれがどんな色か知りたいだけなんだ。

written on 23rd, jan, 2010

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