僕が通っていた小学校に至る一本の道があって、先般帰省したときに散歩の途中にたまたま通ってみると、思ったよりも随分狭い道なので驚いた。僕がまだ小学生のころ、友達とこの道を通って学校から帰る途中、通りすがりの上級生が友人の頭を殴って逃げて友人はしゃがみ込んで泣き出してしまった。僕は闇雲な憤りを覚えながら、足元の石を拾っては彼らに向かって投げつけながら、目に涙を溜めてどこまでも走って追いかけた。そのときの友人は、確か早くに結婚しながら二十代で病気で亡くなってしまった友人だと思う。何故かそんなことを思い出した。
音楽とは何か?
たまたま見た「海の上のピアニスト」は、今世紀見た中では最高にゴキゲンで切ない、素敵な映画だった。素晴らしい音楽はまたしてもモリコーネだ。
僕の音楽。
以前血迷って拙い演奏を紹介した僕が初めて作った曲、実はあの曲のサビのメロディーは当時好きだった女の子のファーストネームなのだ。音階にはすべて音名と云うものが付いている。
例えば僕がスタジオの中で、何をそんなにムキになっているのだろうとか、何をそんなにいらついているのだろうとか、なにをそんなに楽しんでいるのだろうとか、何をそんなに目を輝かせているのだろうとか、そんな風に不思議がられたり鼻で笑われたりしてもいいではないか。構うものか。僕の音楽だ。そしてそれはそう云うものだ。
そんなわけで今世紀最初に見た映画はいい映画でした。ところで、僕は既に船を降りたのだろうか、それともまだ降りていないのだろうか。なんとなくまだ降りてないような気がする。おまけに困ったことに、僕もまた、なかなか船を降りそうに無いと云うことだ。
written at 2nd, jan, 2001