my favorite things vol.27

「食わず嫌い」

ヤナーギサーワ...

驚いたことに、この期に及んでワールドカップに全く興味を示さないという人間が結構居るのである。まことにけしからんことである。ロシアでは人が死んでるっちゅうのに。今日のフランスが一次リーグ敗退した試合、ディスプレイに表示された結果に唖然として大騒ぎしていると、目の前にきょとんとした顔をした上司(十歳年下である)が居た。あまりの反応のなさにこれがいかに大変なことであるかを熱弁を振るったのだが、彼はスワヒリ語を聞いているかのように固まったままだった。まったく、とんでもない奴である。

こういう輩は一体全体、トレンドというものをどう把握しているのか、うん百億という人間が狂気乱舞七転八倒しているものを敢えて無視するとは、まったくもって不届千万である。まさか巨人だ阪神だという田舎野球を応援しているのではあるまいな。それともまさかこれ以上シンプルなものはないというルールが分からないなどという阿呆であるのか。幼稚園児や猿ならともかく、そんなことはあるまい。これが分からんというのなら、団体競技を理解することなど不可能であろう。ともかく、こういった連中は食わず嫌いであるのだ、と思う次第なのだった。

そんなわけで突然話は変わるが、町田康の「くっすん大黒」を読んだ。これが面白かったのである。実は町田に関しては、僕はこれまで食わず嫌いであった。これには深い訳があって、つまり、彼は僕と同じ音楽畑の人間であって、歳もそこそこ近く、そのくせ、いや、それにも関わらず僕よりもほんのちょっと写真映りがよい。かつて睾丸の、いや、紅顔の美少年であって、今なお推定年齢三十代前半、しかもホスト系と誉めそやされるこの僕よりも(ほんのちょっと)いい男であるというのはいささか許し難い。なおかつ、パンクなどという糞みたいな音楽をやっていた奴が小説を書き始めた途端にバタバタと賞を取るというのはまことにけしからん。などと思っていたわけで、今回買ったのも、たまたま文庫で安かったからというそれだけの理由なのだが。ところが読んでみると、これがかつて少年時代に読み耽った若かりし頃の筒井康隆を彷彿とさせるスラップスティックを落語のリズムで書き倒す、という抱腹絶倒のものであった。いやはや。てな訳でいささか文体も影響を受けたか。ええい、ままよ。

で、休暇届を出した。日本×チュニジア戦のある金曜日。一身上の都合で。ってことで。

written on 12th, jun, 2002

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