ジェイムズ・エルロイ「アメリカン・デス・トリップ」


アメリカン・デス・トリップ

アンダーワールドUSA三部作の2作目、ジェイムズ・エルロイ「アメリカン・デス・トリップ」読了。暗殺から暗殺に至る歴史の裏面。文体は前作の「アメリカン・タブロイド」からさらに淡泊になっているが、正直前作の方がインパクト強かった。絶望感とか救い難さも前作の方が上回っているし、その点から言えば「ビッグ・ノーウェア」にはかなわないし、文体の研ぎ澄まされ方も「ホワイト・ジャズ」には及ばず、そういう意味では暗黒のLA四部作の完成度は非常に高かった。今回はどちらかというと書き込みが足らないように思えて描写に物足りなさを覚えた。綿密なプロットを構築してから書く作家なのでその点は素晴らしいのだが、こと面白さという点ではLA四部作の方に軍配が上がると思う。登場人物の魅力という点でも、今回のウェイン・テッドロー・ジュニアよりも前作のケンパー・ボイドの方が魅力的だった。両作に登場する人物の中ではピート・ボンデュラント。もし映画化するとすればかつてのジャン・レノが適任に思える。それ以外が想像つかないぐらい。

エルロイの小説ではとにかくいとも簡単に人が殺されていく。その暴力性は作が進むに連れてエスカレートしているようにすら思える。全部の作品に通底する救い難さは映画「セブン」(デヴィッド・フィンチャー監督)を想起させる。こういったことは言い尽くされているが、エルロイが幼いころに母親を惨殺されたということがどうしても被る。そこにすべての絶望の発端があるのではないかと誰しも思ってしまう。エルロイは絶望の作家だ。(そういえばデヴィッド・フィンチャーも絶望の監督だ。)その救い難い絶望を抱えながら、それでいて面白くかつ読後にカタルシスを得られるというのは並みの力量ではない。プロットがしっかり構築されていて収束すべきところに収束しているからか。つまり、ひとつの必然に向かってすべてが暴走していく感じ。このシリーズはJ・F・ケネディの暗殺から始まり実在した人物も数多く登場して確たる歴史が背景としてあるのである意味に於いて結果は分かっている。にも関わらずこれだけ読ませる。シリーズ最後の次作、「アンダーワールドUSA」もいずれ読もう。シリーズ通して、田村義進の訳が素晴らしい。

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