genius

「天才の軌跡」

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私は天才だった。ここでいう「私」とは僕のことである。つまり、僕は天才であった。始めに断っておくが、これは自慢である。言うまでもなく。なので、はなもちならないことは勘弁して欲しい。「であった」と過去形になっていることに注目して欲しい。つまり、昔の話である。ちなみに今は天才ではない。凡人である。だから「軌跡」なのだ。僕が天才であったというからには、中学のときに全国模試で全国で百番以内に入った(これも一応自慢)とかそういうことではない。そんなのはただの秀才にすぎないからである。では、どこが天才だったのか? それは、証拠があるのだ。ここに。

ここに一冊のノートがある。次に挙げるのが表紙だ。

見て欲しい。言うまでもなく、ゴリラである。これは僕が小学生のときのノートだ。たぶん、10歳か11歳のころ。そのころ、僕は動物学者になりたいと思っていた。そこで書いていたのがこのノートだ。写真ではブレててちょっと分かりにくいが、精細なタッチはどうだ。これが小学生の描く絵だろうか。天才である。

さて、それではノートの中身を見ていこう。

まずは、表紙を開くとこんな感じである。

カモノハシとオポッサムである。なんという精巧な絵なのだろうか。これはまさに天才である。ページをめくってみよう。

なんと精密な絵なのだろうか。驚くべきデッサン力である。ここには主に絶滅した動物が描かれている。ちなみに、びっしりと細かい字で書いてあるのは解説である。

こんな感じでノートは綴られている。どうだ。どうですか。これが小学生の描く絵ですか? 天才でしょう、これは。えっ、ではなんで絵の方に進まなかったのかって? うーむ、それは非常に難しい質問だ。いやね、この後、僕はビートルズを聴いて音楽の方にすっかり夢中になってしまい、そっちの方でもそこそこ秀才ではあったので、道を誤ってしまったのである。いや、まことにもって惜しい才能である。本来であれば、今頃は南仏辺りにアトリエを構えて絵筆を取っていたのであろうか。

以上が僕という天才の軌跡である。なに? これだけ? これだけで十分ではないか。ちなみに、これらの絵、ならびに解説はさる動物図鑑を模写したもの。つまり、真似である。当たり前だろ、これがそうじゃなければ本当の天才だもの。

written on 25th, aug, 2006

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