heroine

「ヒロイン」

ナルシストは不死身だってことなのだが、特にモデルはいないってことにしといて...

連続ドラマの定石として、各回の終わりには必ず何かしら事件やアクシデントが起きて、見る側は宙ぶらりんな状態で置き去りにされる。おお、一体どうなっちゃうんだろう、一週間待ちきれないぞ、と。

ここにひとつの連続ドラマがあって、ヒロインは毎回終わり際に手首を切るってのはどうだろう。ワンクールが終わりに近付くにつれて視聴者の反応として考えられるのは、1)めげずに感情移入して飽くまでもヒロインを応援してハラハラドキドキする、2)呆れて見るのを止める、3)怒りながらも見続ける、4)ドラマの主旨が実は違うところにあると思いながらシニカルなものとして苦笑しながら見る、てなとこだろう。

ただ実際のドラマの作りがどうかと云うこともある。案外昔の少女漫画系のドラマ(大映ドラマとか)は似たようなノリだったし、単にダサい脚本で大真面目に作っている可能性もある。いずれにしても不思議なのは1)の人が想像以上に多いと云うことだが、一方、始めからシニカルな目的で作られている可能性もあるわけだ。

たとえばこうだ。

ヒロインは毎回手首を切る。翌週には立ち直って親は心配のあまり毎回泣き出す。友達は一応そんなことじゃだめなどと涙目で怒ったりしながらも元気出して生きるのよなどと手を握りながら毎回ヒロインを応援し、励ます。ヒロインは毎回友達の応援で立ち直り、目をきらきらさせて突然前向きになる。人生って素晴らしいとかもっと楽に生きようなどと毎回悟ったりもする。友達と親には毎回感謝する。しかし、何故か毎回終わり近くになると突然落ち込んで発作的に手首を切る。要するに情緒不安定で躁鬱なのだ。以下繰り返し。当然母親は台所で一人になると昼間から酒を飲んで涙を一筋流したりもする。6週目ぐらいに入ると何人かいた友達のひとりふたりはシカトを始めたりして脱落。7週目辺りでは父親は真面目に死ぬ気があるのかと説教を始める。ついでにお父さんの若い頃はなどと訳のわからないことも云ったりもする。このころには既に母親はアル中になっている。だいたい8週目ぐらい、後2・3週で終わりぐらいになると、まず友達が励ます代わりによく切れる包丁とかサバイバルナイフを渡す。これゾーリンゲンだからバッチリだよみたいな。母親は食事に砒素を混ぜ始める。別にカレーじゃなくてもいいが。だが生命力の強いヒロインはまだ死なない。最終回になると、両親と友人が入り乱れて首を締めたり、ナイフを振りかざしたりして躍起になってヒロインを殺そうとする。おのおの、涙と鼻水でぐしゃぐしゃな顔でお願い一緒に死んでと云う奴もいれば、目を血走らせててめえ、などと云う奴もいる。この際だから一人ぐらい空手の達人でヌンチャク使ってもよい。ついでに単独行動の好きな先走った刑事が拳銃持って飛び込んで横っ飛びしながら撃ちまくってもいい。しかし、ランボーの如く不死身なヒロインは超人的な力を発揮して...

ま、ヒロインってのはどうなっても主人公なのだ。自分が。

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