遅ればせながら、貴志祐介の「黒い家」を読んだ。文庫本で出たからね。なんせ最近のハードカバーはやたら高いから。どうでもいいけど、これ無茶苦茶おもしろい。やたら怖いし。まさに一気読み。最近読んだ中では読むスピード一番早かったような気が。この本買う前に、たまたま筑紫哲也がNEWS23の中で作者へインタヴューしているのを見てしまったのだが、犯人を思い切りしゃべっていた。かんべんしてくれよ。それでもおもしろかったからよかったようなものの...。
ところで、最近一番入れ込んでいる作家はジェイムズ・エルロイ。いわゆる暗黒のLA4部作を順番に読んでいる。「ブラックダリア」、「ビッグ・ノーウェア」、「LAコンフィデンシャル」と読み終わって、今日(1月8日)「ホワイト・ジャズ」を買ってきたところ。このシリーズほんとにおもしろい。エルロイというと、10歳のときに母親が惨殺されたことがトラウマとしてやたらピックアップされ、おどろおどろしい惹句が並ぶ。実際彼の小説に出てくる死体は無茶苦茶なことになっていて死体損壊が特徴なんてことも言われているが、彼の本領はその綿密に練られたプロットにあり、ストーリーテリングにある。舞台が50年代のアメリカでもあり、敬遠している人も多いかと思うが、読んでみると全然気にならないし、一気に読める。例の死体にしても、横溝正史みたいに演出を狙った誇張されたものでは全然ないし(漏斗をくわえたりもしない)、いかに凄惨な状況でも冷静に描写していてちゃんと必然性もリアリティもある。これはアメリカという何でもありの国の特徴なのかも知れないけど。そういえばトマス・ハリスなんかも似たタイプの作家のような気がする。映画の「羊たちの沈黙」見てもわかると思うけど。猟奇的な事件やエキセントリックな人物(レクター博士とか)がクローズアップされてばかりだけれど、彼も抜群のストーリーテラーだ。それは「ブラック・サンデー」「レッド・ドラゴン」と代表作がみんな映画化されてる(しかも全部おもしろい)ことからもわかる。エルロイにより強く現れてるとすれば、登場人物がユダヤ系であれ、イタリア系であれ、すべてものすごくアメリカ人(的)であること。これは実際の事件をベースに書いているせいもあるだろうが、まさにアメリカの小説という感じだ。
エルロイを読み始めてから、僕は箇条書きで考えるクセがついた。これは冷静な判断をするのに便利だ。たとえば、パチンコで熱くなりそうなときに、選択肢1:このままこの台を打ちつづける、選択肢2:この時点でやめて違う台に移る、選択肢3:今日のパチンコをここまででやめる、という具合。自分が一方向に強く惹かれていて、その先入観で他の選択肢を忘れそうになって冷静な判断を誤りそうなときに、それを回避するのにいい方法だ。
何はともあれ、エルロイはおもしろいよ。
「LAコンフィデンシャル」の映画はまだ見ていないが、今月の20日にレンタルビデオが出る。なにしろボリュームのある話なので、楽しみでもあり、ちょっとデキが心配でもある。