ビデオで「L.A.コンフィデンシャル」を見た。心配していた通り、だいぶ原作とは違う内容に。だいたいエルロイのいわゆる「暗黒のL.A.四部作」はシリーズ全体のみならず、各作品とも大河小説形式に近い年代を追って登場人物が複雑に絡んでいくものなので、1本の映画で完結させようとするとこうなってしまう可能性は高いと思っていたが...。スチュアート・ウッズの「警察署長」シリーズのように、TVシリーズにしたほうが絶対におもしろいはず。実際ドラマ化された「警察署長」は、ほぼ原作に忠実でおもしろかった。ちなみにスチュアート・ウッズは僕の大好きな作家。他の作品も全部おもしろいので、まだ読んだことのない人にはおすすめ。
まだ見てない人と原作を読んでいない人のために詳述は避けるが、プロットの要となる部分で大幅に省略された部分と、逆に詰め込み過ぎた部分(特に人間関係)が目立つ。エルロイの特徴である、うだるような(?)人間関係と、それを演出する陰惨な死体の数々がオミットされているのはいかにもハリウッド的なエンタテインメントにするためか?前者で言えば勧善懲悪がはっきり分かれすぎて、魅力的な登場人物の背景がすっぽり抜けてしまっている。後者に関してはいわんやおや。ただの死体のための死体になってしまっている。これではエルロイ自身のトラウマとそこからくるクールさがどこにもないではないか。逆に強調されているのは正義感と熱血。まさに優等生のアクション・エンタテインメントのつくり。ハリウッドらしいといえばハリウッドらしいか...。「羊たちの沈黙」のジョナサン・デミとか「セブン」のデビット・フィンチャーあたりが監督した方が原作に近くなったような気が。ちょっと古いがロマン・ポランスキーあたりでもよさそうだ。かみさん(シャロン・テイト)が惨殺されてるし。
「セブン」と言えば、犯人役をやっていたケビン・スペイシーがこの映画でもいい味を出している。いい役者だね。次はレクター博士あたりをやって欲しいものだ。アンソニー・ホプキンス引退しちゃったし。最近の悪を演じた中ではこのアンソニー・ホプキンスのレクター博士と「レオン」のゲイリー・オールドマンが出色だったもんな。あとは鶴見辰吾のヤクザもこわいな...。
なんだかんだ言ってはみたが、原作知らずに映画から見る人にとってはそれなりに楽しめるエンタテインメントになっている。逆に言えば映画を見てから原作を読んでも十二分に楽しめるということだから、これはこれでいいのかな...うーん。