love in vain

初恋

who is the girl...

僕の初恋はいつだったのだろう?

思い出す限り、最初に異性として意識したのは小学校の1・2年のころだったと思うが、どうも定かでないのだ。向かいの寺の敷地内に子供のころまで住んでいて、引っ越してしまった女の子か、それとももうひとり、小学校の同級生で後に高校時代に初めてつきあった女の子か。どちらが先だったのかどうしても思い出せない...。ちなみに高校のころつきあったと言っても、バスで一緒に帰ったり、喫茶店に入ったりした程度。生まれて初めて女の子と二人きりで喫茶店に入って、緊張のあまり1時間で煙草を10本ぐらい喫い続けたのを覚えてるが。この子はカトリックに憧れていて、いつも聖書を持ち歩いていて、帰りのバスの中で僕にパリサイ人のページを読めとよく言っていたのを思い出す。何が書いてあったのだろう?どこかに聖書があったと思うので、引っ張り出して今度読んでみよう。

考えてみると、僕が初めてキュンとしたりせつなくなったりする恋をした相手は、日本人ではなくてイギリス人である。と言うと格好がいいが、実はテレビの中の話。こうやって改めて書くと無性に恥ずかしいのだが、確か中学生になったぐらいのときに、旭化成のCMに当時ヒットしていた映画「小さな恋のメロディ」のシーンが使われていて、その中のメロディ役のトレーシー・ハイドに恋してしまったのである。彼女がレオタードでバレエの練習をしているシーンとか、古風な窓から身を乗り出すシーンとか、田舎の片隅の中学生であった当時の僕にとってはそれはもう甘酸っぱい夢のような世界だった。当時やっぱりヒットしていたビージーズの唄う主題歌も、僕にとってはなんとなく甘酸っぱいものだ。なにやらミーハーのようで照れくさいが、たぶん僕にとっては初めて「女性」という「性」の字がつく存在として意識したものだったんだと思う。それに古色蒼然としたロンドンの街並みも僕にとっては遠い遠い夢のような世界だった。昨年ロンドンを初めて訪れたときに、いまだに同じ風景の街並みにふとあの頃を思い出したものである。ああいうところに住んでたら、それはもういい恋ができてしまうような気がしてしまうから不思議なものである。いまだにあのCMに使われたシーンは鮮明に覚えていて、思い出すとちょっとせつなくなったりする。まったくもう、男というものはセンチメンタルなものである...。

もちろん、映画館に映画も見に行った。いま考えると、ほんとに他愛のない映画なのだが、この映画はアラン・パーカーの脚本家としての確かデビュー作である。アラン・パーカーと言えば、最近ちょっとリキミ過ぎのオリバー・ストーンと並んで、その後の数年イギリスの気鋭の監督としてアグレッシブな作品を連発した。当時のこの二人は、いまで言えばフランスのリュック・ベッソンとジャン・ジャック・ベネックスみたいな存在だった。ハリウッドに進出してから、ちと凡庸な監督に見られている節もあるが、力作「ミッドナイト・エクスプレス」とか、アイリーン・キャラの弾き語りが素晴らしい「フェイム」とか、ヒットした「エンジェル・ハート」とか、マシュー・モディーンの出世作「バーディ」であるとか、僕の好きな作品がいっぱいある。

そう言えば、そのころ愛読していた映画雑誌の人気投票で、トレーシー・ハイドがしばらく1位になっていた時期があったので、僕のように勘違いして恋していた男が日本中にたくさんいたのだろう。先程例のデータベースで調べてみたら、彼女は僕と同い年だった。「小さな恋のメロディ」から10年近く経ってから、彼女が映画に再び出演したという記事を何かで見かけて、写真も載っていたのだが、ちょっと太ってしまってあの頃のスレンダーな少女ではなくなっていた。ちょっとがっかりしたのを覚えている。共演していたマーク・レスターとジャック・ワイルドも、いまでは見かけることもなくなった。彼らは僕にとって、いまでも少年や少女のままである。そして、それを思い浮かべるときは、僕もいつのまにか少年になってしまうのだ。

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