ブラジル人というのは、典型的なラテン系というか、確かに陽気なんだけど人の迷惑をかえりみない傍若無人な印象が個人的にはあるんだけど、こと音楽に関してはどうしてボサに代表されるようなああいう複雑で繊細なものになるんだろうといつも不思議に思う。言うところの「サウダージ」というのも、ラテン系の馬鹿騒ぎとは対照的な感覚で、ブラジル人(中南米人)の二面性を表している。
ブラジリアン・ポップスのことをMPBと呼ぶのはなんとなく知ってはいたけれど、MPBと書いて「エミ・ペー・ベー」と読むのはさっきウィキペディアで見て初めて知った。
ジャヴァンはイヴァン・リンスと並んで現代的なMPBの代表的なアーティストだ。よりコンテンポラリーで万人受けするイヴァン・リンスに比べると、ジャヴァンの声や歌い方はなんていうか、もっと土着的な匂いがする。発声がちゃんと出来ているわけでもないし、歌が抜群に巧いわけでもないが、そこが逆にサウダージを感じる。作る曲はブラジルっぽいんだけどモダンでポップな感覚があり、個人的には好きだ。
そんなわけで昨年リリースされた最新アルバムを聴いてみた。僕のジャヴァンの愛聴盤は主に80年代にリリースされたものだけれど、やっぱりいい。上記は1曲目だけれど、適度にジャジーでカッコいい。バックもシンプルな編成で、やっぱり生演奏っていいなと思う。6曲目の「Pecado」って曲も抜群にカッコいい。
個人的にはボサっぽい曲よりもこういった軽快な16ビートの曲の方が好きだ。どこかマイケル・フランクスに通じるところもあるので、その手が好きな人にはおすすめ出来る。アルバムジャケットはどうやら2種類あるみたいだ。
"Rua Dos Amores" Djavan
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"Lilas" Djavan (1984)
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84年のLA録音による名盤。まだジャヴァンの名前も知らなかったころ、当時はデヴィッド・フォスター/ジェイ・グレイドン系のAORを好んで聴いていた時期だったので、初めてこのタイトル曲を聴いたときは非常に新鮮だった。プロデュースはデヴィッド・フォスター・プロデュースのアルバムでストリングスやシンセのアレンジをやっていたEric Bulling。Eric Bullingがメイン・アレンジをやっているアルバムって、これぐらいしか知らない。メンバーは当時もっとも売れっ子のLAのスタジオ・ミュージシャン連中で、デヴィッド・フォスターも参加。当然、サウンドは当時の典型的なLAサウンドなので、根っからのMPBファンの人には好き嫌いがあると思う。エンジニアが当時の一番の売れっ子でデヴィッド・フォスター・ファミリーのウンベルト・ガティーカなので、ドラムのスネアがデカくてアンビエンス(残響)が多いのが特徴。当時はこれが流行りだったけれど、今聴くともう少し自然な方がよかったような気もする。これはこれでバランスが取れていてひとつの世界を作っているけれど。Eric Bullingのシンセとストリングスのアレンジは独特な透明感があっていい。このアルバムはアナログでしか持ってなくて(CDは持っていない)、アナログのレコードは全部処分してしまったので今分かる範囲でパーソネルを書いておく。ギターは確かポール・ジャクソンJr.とマイケル・ランドーだったと思う。間違ってたら申し訳ない。
Paulinho Da Costa (perc)
このアルバムで一番好きなのは、3曲目の「Esquinas」。というか、Djavanの曲の中で一番好き。ポルトガル語なので歌詞はさっぱり分からないけれど、死ぬほど好き。10ccの「I'm Not In Love」と同じくらい好き。ジョン・レノンの「Mind Games」と同じように、ドラムは普通のビートを叩いているのにベースがレゲエのラインを弾いてるのもいい。
ジャヴァンの名を一躍グローバルなものにした名曲がこの「Samurai」。82年にロニー・フォスターのプロデュースでやはりアメリカで録音されたアルバム、"Luz"の1曲目。この曲とこのアルバムでMPBが認知されたと言っても過言ではない。ハーモニカはスティーヴィー・ワンダー。
"Luz" Djavan (1982)
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うむ、「Samurai」はiTunesではライブ盤しかないなあ。一応これもリンク貼っておこう。
"Aria (Ao Vivo)" Djavan (2011)
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