石川晶はジャズドラマー。2002年に亡くなっている。彼のバンド、カウント・バッファローズで、日本におけるいわゆるジャズ・フュージョン、ジャズ・ロックの走りになるものをいち早くやっていた。アフリカ音楽にも傾倒し、晩年はケニアに移住して現地で亡くなっている。彼はかつて、恵比寿の駅前にジャズのライブをやる(後年はアフリカ音楽中心)「ピガピガ」という店(2001年に閉店)を経営していたが、僕の学生時代のバンドのキーボードであるヤマザキが、大学を卒業後、ずっとこの「ピガピガ」で毎晩演奏していた。実を言うと、ヤマザキに呼ばれて僕もゲストミュージシャンとして、一度この店でギターを弾いたことがある。そんなわけで、僕も一度だけ石川さんと共演したことが。このときは石川さんはドラムではなくパーカッションを叩いていたが、彼に「ゲスト、ギター、スケザ!」と紹介されたことを思い出すと、今でも笑ってしまう。色黒で、見た目も黒人みたいな人だった。
NHKの教育テレビにも出ていたりして、「石川のおじさん」と呼ばれていたりしたが、スタジオ・ミュージシャンとしても活躍して(当時のスタジオ・ミュージシャンはほとんどがジャズ系のミュージシャンだった)、ヤマザキに聞いた話によると、尾崎紀世彦の「また逢う日まで」のレコーディングで、アレンジャーが書いたリズムを「こんなのダサい」と言って無視してあのリズムを叩いた。
僕が石川さんと再会したのは、YouTubeを介してだった。既に石川さんが亡くなってからだ。それまで、彼の音楽を聴いたことがなかった。で、この「Get Up!」を聴いてあまりのカッコよさにぶっ飛んだ。このスピード感、疾走感、躍動感。当時の日本の音楽シーンを考えると、信じ難いほどモダンで切れのいいドラミング。豪華なメンバーで、各ミュージシャンの演奏も素晴らしい。文句なしの傑作なんだけれど、現在は中古でしか手に入らない。しかも高い(笑)。当時のカウント・バッファローズについては、このアルバムでもギターを弾いている直居隆雄が、ここに詳しく書いている。面白いし、非常に興味深い。彼らがいかに突出していたかが分かる。
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鈴木宏昌 (com.)
"オキナワ" 石川晶とカウント・バッファローズ (1976)
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"ELECTRUM" 石川晶とカウント・バッファローズ (1970)
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現在新品で入手出来るカウント・バッファローズのアルバムは上記の2枚。と思って今見たら、"ELECTRUM"は今在庫切れなんだ……。"オキナワ"は"GET UP!"のメンバーにボーカルの伊集加代子、タイムファイブが加わって、時代を感じさせる曲をファンクアレンジで演奏しているが、かなりイージーリスニング寄りで"GET UP!"とは随分印象が違うので注意。アマゾンで試聴できる。一方の"ELECTRUM"はハードなジャズ・ロックという感じで、入手できるようだったらおすすめ。