高田みち子

J-POP

僕が高田みち子というシンガーソングライターのことを知ったのは、わりと最近になってからだ。例に漏れず、YouTubeで。一聴して、フックというかインパクトは弱いんだけど、なんかいいなあと思った。でも、売れてないんだろうな、とも思った。売れる匂いがしないのである。YouTubeでよくある、「こういう素晴らしいシンガーが売れない日本の音楽シーンはどうかしてます」という類のコメントがつくようなアーティストだ。なぜ売れる匂いがしないかというと、前述のようにフックやインパクトが弱いということ、ミディアムスローの楽曲が多くて地味な印象を受けるだろうということ。確かにいい声はしてるし楽曲もいいんだけど、曲作りのテクニカルな面で言うと、ダイアトニックなコード進行(スケールに沿ったコード進行)が多くて、劇的な転調とかもほとんどなく、メロディアスな曲なんだけどリズムを重視していない、つまりビートからの発想があまりない。こういったことが総じてインパクトを弱くしている。上の写真では眼鏡をかけていないけど、ライブの動画とか見るとルックス的にも地味、ご本人には申し訳ないがキャイ〜ンの天野を連想してしまう。

じゃあなんでその売れる匂いのしないアーティストを紹介しているのかというと、僕自身はいいと思うし、好きだから(笑)。劇的な要素は少ないんだけど、その分、本人はそう言われるのは嫌かもしれないけど、「渋い」という言い方も出来る。いや、それはあまり適当ではないな。安心するというか、ほっとするというか、そういうと「癒し系」という陳腐なカテゴリーになってしまいそうだが、とにかく、なんかいい、としか言いようがない。いろんな意味で、昔のカーペンターズを聴いている気分に近いものがある。つまり、どこか懐かしいのか。近年のJ-POPの女性シンガーに蔓延している、R&B風のブルーノートを使ったこぶしを無闇に使わない素直な歌い方も好感が持てる。僕自身が彼女をプロデュースするとしたら、基本的なよさは生かしたままでコード進行やリズムに一工夫させると思う。でももしかしたら、そうするとその基本的な彼女のよさが薄れてしまい、より普通のいまどきのJ-POPに近づいてしまう恐れもある。アルバムとしては、「Night buzz」がいち押し。今の彼女に必要なものは、ちょっとした毒のようなものだと思う。

彼女のブログはここ


松木恒秀との組み合わせ

"Night buzz" (2004)

インディーズで2枚出した後の3枚目、メジャーデビューとなったアルバム。いい。ホント好き。サウンド・プロデュースは元プレイヤーズのギタリストでスタジオ・ミュージシャンの松木恒秀。バックは松木のバンド「What is HIP?」(松木恒秀:guit、岡沢章:bass、渡嘉敷祐一:drums、野力奏一:key)。渋いメンバーだなあ。そもそも松木恒秀が渋いミュージシャンだから、彼のプロデュースでこのメンバーなら、必然的に渋い音になる。それが派手さはない高田と上手くマッチングしていて、実にいい味を出している。曲もポップでいい楽曲が揃っている好アルバム。何故か新品だと高い(廃盤なのかな?)が、中古ならそれなりに安く買える。ちなみに音質はよくないがアマゾンで全曲試聴できる。

"Night buzz"  高田みち子
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"TALEA DREAM" (2005)

通算4枚目、メジャー2枚目のアルバム。バックは同じく「What is HIP?」。"Night buzz"と比較すると全体的にジャジーで落ち着いたアルバム。彼女にしてはブルージーなミディアム・ナンバー、「時の涙」がカッコいい。これも全曲試聴できる。

"TALEA DREAM"  高田みち子
Amazon (CD)

"TOKYO GIRLS TALK" (2008)

メジャー3枚目。サウンド・プロデュース松木恒秀、バックが「What is HIP?」と、同じスタッフ。このタイトル曲しかYouTubeになかったが、この手の竹内まりや風のレイドバックしたジャンプナンバーは彼女の本懐ではないと思う。アルバム全体としてはさらに地味な方向に。さすがにマンネリか。アルバムを出していく流れとして、トータルのディレクションの方向が違う気が。

"TOKYO GIRLS TALK"  高田みち子
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インディーズ時代

この曲を聴いても分かるように、インディーズ時代の方がポップだし、キャッチーだ。まあ普通と言えないこともない。やっぱり彼女の場合、アルバムリリースのトータル・ディレクションに問題があるような気がするな。それにしても高いな、このアルバム。廃盤なんだろうな。

"MICHIKO SONGS"  高田みち子 (2002)
Amazon (CD)

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Sukeza
元音楽プロデューサー。

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私的愛聴盤の紹介。かつてはあらゆるジャンルを聴いていましたが、最近はジャズを聴くことが多いです。ここで紹介するのは、絶対的評価ではなくて、僕の好みです。最近発見したから新しいものとは限りません。