Talc

Rock/Pops

いわゆるオートチューン(Perfumeとかも使ってる)を使った80年代サウンドのオマージュとして、Daft Punkの新譜がえらい評判で、一時期iTunesのチャートでも1位だったし、土岐麻子とかも絶賛してたけど、同じようにオートチューンを使った(依存度は低いけれど)80年代サウンドを再現したポップスとしては、個人的にはTalcの方が好きだ。オートチューンの使用頻度が少なくて生歌がメインなところも好感が持てる。まあDaft Punkはフランス、Talcはイギリスのユニットだから、コンセプトもカラーも異なり(Daft Punkはそもそもハウス・エレクトロに分類されてるし)、この辺は好みが分かれるだろう。

TalcをAORのアーティストと呼ぶのには若干抵抗を覚える。そもそもAORの定義自体が曖昧なところがあり、アダルト・オリエンテッド・ロックとしてのAORという言葉は、日本独自のカテゴライズであるし。Talcも広義の意味ではAORになるのかも知れないが、日本で一般的にイメージされる80年代初頭のいわゆるウェストコースト・サウンドとは異なる。むしろSwing Out Sisterとかの流れを汲むブリティッシュ・ポップと捉えた方がいいと思う。それ以前にも売れなかったけれどMillions Like Usとかその手の流れはブリティッシュ・ポップの中にもあった。Talcというユニットに限ると、もっとさかのぼれば、10ccに通じるものもある。さらにさかのぼればビートルズの影響も垣間見える。ジャズの影響もあるけれど、例えばジャミロクワイの元メンバーが作ったユニット、Samuel Purdeyをアシッド・ジャズと言う人もいるけれど、個人的にアシッド・ジャズっていうカテゴライズに関して懐疑的なこともあり、AORならまだしも、明らかにポップス、ポップ・ロックのカテゴリーだと思う。ジャミロクワイをアシッド・ジャズというのはまだ分かる。アメリカだったらこの手をファンクに分類する人もいる。その方がまだピンと来る。

Talcの楽曲、サウンドに関して言えば、ポップでキャッチーな部分と、カッコよさ、渋さというものが絶妙にブレンドされている。とりわけ、渋さというものが全面に出るのではなく、隠し味のようになっているところがいい。一聴した印象は実にキャッチーで、うつ病の僕ですら「ゴキゲン(死語)」という言葉を思い出す。70年代後半から80年代初頭にかけての音楽をリアルタイムで聴いてきた僕の世代にとっては、実にツボを射ている。で、80年代後半から90年代にかけてのブリティッシュ・ポップ・ロックにあった暗さのようなものはない。とにかく、見かけはブルース・ブラザースみたいなこのユニット、只者ではない。


■ より完成度を増した新譜

"Licensed Premises Lifestyle" (2008)

彼らの2枚目のアルバムだが、最高。これは1曲目だけれど、8分で刻むピアノのブロックコードとかは80年ごろのウェストコースト・サウンド(デヴィッド・フォスター関係とか)を想起させるけど、前述のようにむしろビートルズ、10ccといったブリティッシュ・ポップ・ロックの流れを汲んだポップ・ロックだ。デビューアルバム同様、すべての楽曲の完成度が高いが、このアルバムに関してはとりわけサウンドの完成度が高く、よりキャッチーな印象。とにかく、AORかどうかなんてどうでもいい、って感じ。確かに80年代サウンドなんだけれど、リアルタイムで80年代を体験していない人にも十分新鮮に聴こえると思う。

"Licensed Premises Lifestyle"  Talc

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■ デビューアルバム

"Sit Down Think" (2006)

上記はデビューアルバムで一番ヒットした曲だが、オートチューンをフィーチャーしているが、むしろどこか懐かしい感じがする。このデビューアルバムは2枚目と比べるとジャジーでスティーリー・ダンの影響が感じられる。かといって、くどいようだが「スティーリー・ダン=AOR・ウェストコースト・サウンド」であるとは個人的には思っていない。確かに、お子様向けというよりも大人向けであるとは思うが。デビューアルバムからとにかく全曲の完成度高い。2枚目と比べるとこちらの方がアコースティック色が強く、レイドバックしている印象を受ける。渋い。もちろん、いい意味で。

"Sit Down Think"  Talc

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Sukeza
元音楽プロデューサー。

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私的愛聴盤の紹介。かつてはあらゆるジャンルを聴いていましたが、最近はジャズを聴くことが多いです。ここで紹介するのは、絶対的評価ではなくて、僕の好みです。最近発見したから新しいものとは限りません。