numbness

「痺れ」

...

顔が痺れる。僕の中の誰かがつぶやく。「こいつは酷い」。もう一人の誰かがつぶやく。「確かに」。手が痺れて関節が痛む。いろんなところが強張る。脳にアルミフォイルを被せた感じ。「やってられんな」また僕の中の誰かが言う。一体何のために僕の脳がこんな勘違いを犯しているのか理解に苦しむ。音楽が夜の空気を振動させて僕の痺れと同調している。僕の頭は途方もなくぼんやりする。何か不快なものが僕の顔にべったりと貼りついているような気がする。例えば、エイリアンの幼生のようなものが。肩が凝る。僕は呆けたように音楽の前に佇む。今夜はどうやらこの痺れは治まりそうにない。無表情という仮面を被って。沈むという感じはしない。何故なら僕は既に底に張り付いてるから。ギターソロが頭に突き刺さる感じがしてちょっとボリュームを絞る。しかし、今の僕は静寂が少し怖い。エレクトリックピアノを弾きたいと思う。引越しのときに捨ててしまったからここには鍵盤の類はない。頭の中はネヴァダ州の砂漠のように荒涼としてすべてを拒んでいるのに、何故か音楽は作れるような気がする。眉毛の辺りが突っ張って目が重い感じがする。僕の体中に張り巡らされたバリアーのようなものが聞こえてくる歌詞をすべて跳ね返してしまう。僕は言葉に取り残される。ただ痺れて。すべては偽りなのに、それが僕を孤独にする。悲しいわけでも寂しいわけでもなく、ただ何もないところに佇んでいる気がするだけだ。なんだか現実と夢の境目にいるようだ。キーボードを打つ手を休めると、僕は彫像のように固まってしまう。ときおり、風が吹くように頭痛が通り過ぎる。僕は何をしているのだろうと思う。ただ痺れて。

written on 18th, mar, 2011

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