pain

「痛い話」

しかし、人間というものは何で痛いときに首を伸ばしてしまうのだろう...

実を言うと僕は骨折というものをしたことが無い。大病というのも子供の頃の盲腸ぐらいしか無い。誤診はいくつかあったが。従って他の人と比べてどれだけ痛い思いをしているのかはわからないが、とりあえず痛かった話。

随分と古い話になるが、高校生のときに左手の人差し指にイボが出来た。場所はちょうど爪の付け根のところである。思春期の少年としては随分と気になって、家にあったイボコロリなどを付けたりしていたのだが、一向に治らない。で、意を決して学校のそばの皮膚科を訪れた。そこで治療を受けたわけだが、これが注射なのである。初めて行ったとき、ちょっと痛いですよと医者が言いながら取り出した注射には結構な量の薬が入っていた。見たところ2・3センチはありそうだ。こ、こんな量が指の先なんかに入るのかと、見た途端にビビりまくった。ちょうど映画「マラソンマン」でダスティン・ホフマンがローレンス・オリヴィエに歯を削るヤツを見せられた状態である。それで、最初にイボの根元に注射を射たれたときの痛さといったら、それこそ飛び上がるほどの痛さであった。考えて見て欲しい。指の腹はたぶんさほど痛さを感じないように思えるが、反対に指の表(背中?)側はやけに敏感に出来ているのだ。とにかく、それまで生きていて一番の激痛であった。ところが、それだけではなかった。なにしろ2・3センチ分の薬が入るのである。それから医者が注射器をゆっくり押し始めた途端に永遠とも思える激痛が...。これを音で表現すると、まず打たれた瞬間に思わず「うっ」と声に出しながら首が硬直し、それ以降は「ぅぅぅ」(息を呑み続けている)...。それから2度ほど注射を射たれてようやく治ったのだが、二度目からはその医者を訪れるのが恐ろしかったこと...。あのときのイボは治ったものの、その指の爪は不恰好に歪んでしまった。たぶん胃が悪いせいだが、直接の原因は注射だろう。

時は流れ、いつの間にか僕もいっぱしの大人になっていた。純情だった僕はすっかりただのスケベになり、大人のつきあいに溺れていた。あるとき、つきあっていた人妻から電話があって、医者でクラミジアかもしれないと言われたからあなたも診てもらった方がいいと言われた。そこで、以前遊びまくっていて雑菌を移されたときに診てもらった三軒茶屋の医者を訪ねた。医者に事情を話すと、じゃ脱いで下さいと言われた。これは結構屈辱的なのである。実は以前診てもらったときは、じゃここに先を乗っけてと言われて昔理科の時間に使ったようなガラスの板(何て言うんだっけ...)を出され、乗っけた亀頭の先を思いっきり医者に指で押されたのであった。情けない...。それはともかく、今回は医者の隣に立っている看護婦さんが相当にかわいい子なので余計に屈辱的である。かと言ってためらったりしたら、それこそ格好悪い。もう死ぬ気でズボンを降ろしてナニを出すと、医者がこれで尿道の中削り取りますからちょっと痛いですよ、と金属の耳掻きみたいなものを取り出した。前回の例を出すまでも無く、医者の言う「ちょっと」というのは「この世で一番」とか「世界最高」みたいなものである。まあ、中田のオーバーヘッドキックが「うまく当たらなかった」というコメントと似たようなものだ。で、見るとその器具は先に金属のハケみたいなものが付いていて、僕は車のプラグを掃除するヤツを思い出した。尿道の中に入ると思うと、とにかく物凄い太さに見える。この時点で既に括約筋は極度に収縮していたのだが、何しろ看護婦さんがいるのでカンベンして下さいとポコチンを出したまま泣いて謝るわけにもいかないので、僕は死体のような目をしてなすがままにされていた。実際、精神的にはもうすでに死後硬直が始まっていたようなものである。それで、その器具が尿道に入ったときの痛みといったら...死にました。

思うに、ほんとに凶悪な犯罪者は死刑にせずに、終身刑にして毎日この治療を行なうのがいいと思う。あなた笑ってるかも知れないけど、一回やってみ。尿道に刺さったまま空中浮遊が出来るよ、麻原みたいな。

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