once upon a part-time

「アルバイトな日々」

むかしばなし...

僕は学生のころにいろんなバイトをやった。そんな中で一番変わったバイトと言えば避難器具の点検かな。

なんせ20年近く前のはなしなので、最近はどうか知らないけど、当時の避難器具といえば窓から降ろすホースの太いヤツ。よく飛行機の避難訓練なんかでも見かける、中をすべり降りるヤツだ。なんの拍子か、大学の同じサークルの友達の紹介だったと思うが、ワリのいいバイトがあるというので始めた。当時たぶん30代のワイルドな兄弟がやっていて、彼らの手伝いというわけである。避難器具が壊れてないかどうか、滑り降りてみて点検する、というバイト。いちおう説明を受けて、もともと高所恐怖症の僕は内心ものすごくビビリながらも彼らの車に乗って初仕事に出かけた。

車中で僕は彼らに聞いてみた。
「やっぱり怖いとこってあるんですか?」
「んー、成田の管制塔かな。4・50メートルあるから」
もう僕は上の空である。おまけに駄目押しがきた。
「まあ、去年一人落ちて死んだしな...」
「...」
僕は死ぬほど後悔した。

結局、僕はもうなくなってしまったらしい日本橋の高島屋の5階あたりから避難器具で降りたりしたのだが、確か3・4回ぐらいでやめてしまった。何が怖いと言って、窓の外まで乗り出して避難器具を降ろすときが一番怖いのだ。当時としてはワリのいいバイトだったんだけどね...。

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