恐怖小説、最近で言うホラーの古典的な作家にラヴクラフトという作家がいる。いわゆるブラム・ストーカーとかの古典ホラーとは若干趣を異にした、どちらかと言うとポーとかの流れを汲む作家である。読んだのが中学生のころなので、あまり記憶が定かではないのだが、イメージとしてはポー同様、文学的な色が濃かったように記憶している。にもかかわらず、邪悪でかつ未知なるものへの恐怖と言う、今のスティーヴン・キングとかディーン・クーンツに通じる現代ホラーの先鞭を付けた作家、と記憶している。如何せん、最近自分の記憶と言うものがナニなので、ナニなのだが。そんなこともあり作家本人の意に反してかどうかはさておき、いわゆるB級ホラー、スプラッターとして彼の原作はやたらと映画化されているのである。恐らく一番多いのが代表作「ダンウィッチの怪」。彼の描く恐怖の世界と言うのは、ちょうどあのスピルバーグの「ポルターガイスト」に出てくる壁を隔てた異次元の世界とか、「ヘルレイザー」の地獄のようなものを思い浮かべればよろし。
で、我が家にもラヴクラフトの世界に通じるような魔境が存在するのだ。それは何を隠そう、口にするだに恐ろしいが、洗面台の下である。
大体において、僕の住むアパートは今を去ること13年前に引っ越したときから、場所や間取り(2DK)を考えるとやけに安いのである。途中で日当たりが悪くなったこともあり、当時からほとんど値上がりしていないのだが、バブルの頃などはほとんど相場の半額ぐらいだったと思う。ま、少しぐらい家賃を貯めてもカンベンしてくれるし、いい大家さんに当たったな、ラッキー、ぐらいに思っていたのだが、いつだったか、僕の前にはお婆さんが住んでいたというのを小耳に挟んだ。ん?もしかして、そのお婆さんがこの部屋で亡くなったのか?まさか、自殺とかじゃあ...と考え始めるとマジで異常に恐いので考えないことにする。
考えてみると時折寝床で不整脈みたいに脈拍が不規則になったことがあるぞ...。
ところが、最近ちょっと冷静に例の「特命リサーチ...(忘れた)」よろしく分析してみると、なんとなく原因がわかった。恐らく寝る前に殺虫スプレーをガンガン撒いたせいである。考えてみると、ゴキブリを殺してしまうような毒なのだから、動悸がしたりするのももっともである。これがなんでわかったかと言うと、今年の夏はやたら暑くてしかも残暑が延々と続いているので、近頃やたらゴキブリが出るのである。それで、スプレーを新しいのに買い換えたのだが、この「ゴキジェットプロ」という奴、威力は只者では無い。スプレーに書いてあるように瞬時に動きが止まる、と言うのはちと大袈裟だが、少なくとも瞬時に動きが鈍ることは確かである。それで面白がってガンガン噴きかけていたら、動悸がした...ま、アホである。
何の話だったっけ...
あ、それで洗面台の下であるが、これが何時の間にか、たぶんなんかのビンでも落としたときだろうが、シンクにひび割れが出来てしまい、恐らくそこから水が垂れてしまうのであろう、ある日久しく開けていなかった洗面台の下の扉を開くと、そこには恐ろしい異次元の世界が...。なんと湿気で床が抜けかかっているではないか。たぶんゴキブリくん(仮名)たちが始終出入りしているのも一つにはこのせいもあるのではないか。とにかく気持ち悪くてつぶさに観察したわけではないので、定かでは無いのだが。
そんなこんなで、飛んで火にいる夏のゴキブリを見かけるたびに、「ゴキジェットプロ」で一撃必殺、ということを繰り返していたのだが、先日とうとうスプレーがカラになってしまった。地元の薬屋に新しいのを買いに行くと、前回バーゲンのときに買ったときよりも200円ばかり高い。この500円前後のレベルで200円の差というのは致命的な隔たりがあるような気がして、さんざん悩んだ挙句、今度は毒餌タイプの「コンバット」という奴を買った。理由はズバリ、安いから。これが箱の裏を見ると、韓国製である。もうそれだけでいかにも利きそうだ(理由は特に無い)。説明書きによると、1.ゴキブリには巣がある...腰が抜けた...2.ゴキブリは仲間の糞を食べる...もうこうなるとホラー映画である。まあ、それで、このコンバットを食べたゴキブリが巣に戻ってした糞を食べた奴も死ぬので一石二鳥、という次第である。こう読むとなかなか理屈に適っている。ねずみ講的連鎖式大量殺戮兵器である。
このコンバットを仕掛けて数日たって、夜に妙な羽音を聞いたので見に行くと、ちょうど仕掛けたあたりに二匹ほどバタバタしている。おお、ナイス。しかし、ちょうど部屋と部屋の間のドアの前なので、移動するたびに踏んでしまいそうになる。なにより見た目が気持ち悪過ぎる。ゴミ箱に早々に放り込んでしまいたいのは山々だが、それでは例の巣に戻って糞をして云々という効果が薄れてしまうのではないか?この場合はまだ生きているわけだし、我慢してもう少し様子を見てみよう。しかし、気持ち悪いな、これ放っておくの...ようやく翌朝死んでいたので捨てた。
ん?一体全体、オレは何を書いているのだ?