先日押入れをひっくり返していたら、学生時代の譜面が出てきた。当時は片っ端から気に入ったギターソロをコピー、つまり採譜していたのだ。あるわあるわ。ルーズリーフに3・4冊分、ジェイ・グレイドンやらラリー・カールトンやらリー・リトナーやらスティーヴ・ルカサーやらアル・ディ・メオラやらジョージ・ベンソンやら、果てはジョー・パスやチャーリー・クリスチャンまで。マメだったなあ。なにしろ写譜用の万年筆まで持っていたから。こういうところはA型である。自分の曲の譜面とかもあるが、中には友達と冗談でやっていた田原俊彦の「哀愁でいと」なんてものまである。そんな時代だったのである。
ついでにボロボロになったルーズリーフに書いた鉛筆書きの自画像も出てきた。裏をひっくり返すと、当時付き合っていた彼女が書いたNSPの天野滋あたりの歌詞が。しかし、例のページに載せている自画像も同じ頃に書いたものだし、どうやら今もむかしも自意識過剰は相変わらずらしい。
もうひとつついでに寄せ書きの色紙も出てきた。サークルの連中が書いたものだが、半分ぐらいしか埋まってなくてスカスカなのは、これが四年の時のもので僕が留年することになっており卒業しないことがわかっていたからだろう。久しぶりに読むとなかなかに訳の分からんことが書いてある。ヒジョーにつまらん企画ではあるが、字数稼ぎに少々ピックアップしてみよう。とりあえず著作権無視で原文ママ。
・お幸せに!(男)
いきなり意味不明だ。当時はサークルで一番いい女と付き合っていたのでやっかみ半分か。この二年後に思いきり振られるのだから人生は辛い。
・スケザさん、パパとママはお元気ですか?弟銀行にはいまだにお世話になっていますか?これからも精進を続けてりっぱなギタリストになって下さい。(女)
パパとママは元気ですよ。弟は本当に銀行員になってしまった。すまん、僕はただの社会不適合者の不良中年になってしまったよ。
・スケザくん、なるべくいつまでもいるね(女・帰国子女)
おまえいきなり日本語おかしいぞ。まるで意味不明だ。ちなみにこいつはその後同級生と結婚してさんざん浮気した挙句慰謝料もらって離婚したと云うとんでもない奴だ。
・最高です。新しい世界頑張って下さい。(男)
これも意味不明。いったい何が最高なのだ?法の華か?新しい世界ってなに?
・祈りましょう、蔵玉錦の横綱昇進を(男)
なんだこいつは?ちなみに蔵玉錦はザタマニシキじゃなくてザオウニシキ。僕の田舎出身の力士だ。
・今度是非中国語の遊びを教えて下さい。(女)
ここまで来ると完全に誤解されてるな。ちなみに僕が初めてマージャンをやったのはこれから7年ほど経ってからである。
・スケザさん、みゅーは元気ですか?ちゃんと可愛がってますか?なんかすけざさんて優しい人じゃないかと思いました...(女)
...実はこのころ衝動買いしたモルモットを飼ってたのだ。こういう誤解は多いに結構なことである。
・Dearすけざさん、天才はだのギタリストが”このミートは絶対少ない”と食べかけのお皿をもって量をつぎたしてもらいにいってた...。すっごくいいナーと思った。(女)
話を作るンじゃない!わしがそんなことをするわけがない(と思う)。そもそも肌は綺麗だが天才肌ではない。
・スケザ!!スケザ語はクラブを超えて人々の間に浸透しています。(女)
スケザ語?はて?日本語をしゃべっていたと思ったが...そういえば前に同級生もそんなこと云ってたな。当時は確かに「馬鹿的」などとしゃべっていたが、あれは前もこのコラムに書いたAが云い出したことだ。前にも書いたがそもそも「素人」を「すじん」などとすまして云う奴なので、「それはサル的だ」などとにこりともせずに云う奴だったのである。当時もAにお前が最初に云ったんだよな、と念を押したらオレじゃなくてスケザだなどと大嘘を吐いていたが。確かに当時のライブのテープなんか聞くと、合間のMCで「新曲の嵐」などと訳の分からぬことを云っているが、こういう誇張表現はなにも珍しいことじゃあるまい。今で云う「ちょー」だの「凄過ぎ馬鹿過ぎ禿過ぎ」だのと同じだ。同じようなので当時流行っていたのは「キョクチ」つまり「極致」だが、これはそのころ流行っていた深夜放送(谷村新司とばんばひろふみのセイヤング)から。ちなみに青短(青山女子短期大学)では「地獄のように」と云うのが流行っていたらしい。まあ、「今日はアンポンタンの嵐だ」とか「腹減った的」だの「うんこのキョクチ」だの云っていたとしても、だいたい、「マンモスうれピー」なんて方がよっぽどヘンだろうが。
このへんにしとこ。