time is money vol.13

「権利」

メディア以外の誰にも喧嘩を売るつもりは無いので、誤解無きよう。悪しからず。...

某掲示板を見て、こんなことを思い出した。

むかしむかし、学生の頃、いまのように風呂付きが当たり前などと云うのは考えられないころ、当然のように毎日銭湯に通っていた。で、皆当然のように自分が湯船に浸かっている間はカランの前の椅子の上に自分の洗面器等を置いて場所をキープしていた。ある日、混んでいるときに、あるオッサンが椅子の上の洗面器をどけて座った。すると洗面器を置いていた学生らしき若い奴が戻ってきて、「すみません、そこは僕が予約してるんですけど」と云うと、オッサンは「予約って何だ?どこに書いてあるんだ?だいたい使ってないのにモノ置くなよ。ふざけたこと云ってんじゃねえよ」...オッサンの云う事がもっともである。

大体に於てパチンコで云う「シマ」という言葉からして、ヤクザの縄張りの呼称と同じだ。国語辞典で引いてみると、境界に区切られて勢力関係を示す範囲、と云うことらしく、どうやら花柳界辺りが古そうだが、パチンコの場合は、テキヤ→ヤクザ→パチンコ屋と云う流れだと思う。例えば、自分が連日打っていた台を他の人間が打っているのに腹を立て、「ここはオレのシマだ」とか言おうものなら、単なる地回りのチンピラの会話そのものである。自分が毎日打っている台だから自分に権利がある、などと云うのは考えてみれば自分の勝手な思い込みであって、店がそんなルールを唱えているわけでもあるまいし、所詮はかけもちしているのと大差無い。

シマを荒らされた、などと云うのは集団で押し寄せるゴト師などに使うのならまだしも、単に先を越されて台を取られたぐらいで云うのはお門違いである。そんなのは自分の立場からの一方通行の価値観に過ぎない。巷で云う「マーク屋」と呼ばれる類の人のオカマを掘るのが専門の輩に座られた日にはそれまでで、文句を云っても始まらない。そもそも人にどう思われようが、恥も外聞もなく儲かればいいと思っているからマーク屋足り得るのである。どうしても打ちたければ人より早く並ぶなりして押さえればいいわけで。とにかく空いている席に座って打つ、というのが最低限のルールである。

先日血迷って買ってしまった雑誌に、パチプロ同士が先にシマで打っていたプロにここで打ってもいいかと了承を得てから打った、ということがまるで美談のように載っていたが、アホらしい。仁義だなんだとあんたらヤクザか。そんなのを礼儀だなんだ云うのはただのヤクザもんだ。だいたいプロだなんだをどこで区別すると云うのだ?朝から来て毎日打っている奴がプロなら、午前中に店にいる客は皆プロだ。食い扶持がパチンコだけの人間を全てプロと呼ぶことに異論のある人は山のようにいるはずだ。かと云って稼ぎが一定額以上の人間をプロと呼ぶ、などと云うのも妙な話だ。

稼ぎ云々で思い出したが、腹立ち紛れについでに書くと、近頃何が腹が立つと云って、もっとも売れている雑誌で体感機で稼いでいる人間をまるで英雄扱いしていること。店のルールを無視していると云うことは、そもそも換金率が店毎に違うと云うこと自体が意味が無くなってしまうし、無制限札の貸し借りをして使い回しをしてしまうようなおばちゃん連中となんら変わりない。乱暴な言い方をすれば万引きの上手い奴と大差無い。店員のチェックが甘い店を選ぶ云々などと云うことはまるで万引きのノウハウそのものではないか。てなわけで僕は体感機に関しては、自分でプログラムを解析して自作の機械を使って攻略している人以外は論外であると思っている。

えーと、話を元に戻すと、そんなことを云いながらも精神的には僕も大方の人と同様なわけで、やはりマーク屋的行動をされると辛いし腹も立つ。連日顔を合わせていて、プロでござい、と云う奴に前日自分が打っていた台に座られると、こいつ恥ずかしくないのか、などと思ってしまう。ま、恥ずかしいと思う奴も、全然思わない奴もいるわけで。僕のように恥ずかしいと思う人間は、知った顔の人間が打っていた台はやはり打ちにくいわけで、出来ることなら打ちたくない。そんなことで嫌な顔をされたり、あれこれ悪感情を抱かれたくは無い。まあ、この辺が義理人情の日本人である悲しさなのであろうが、要するに気持ちよく打ちたいだけなのである。ただし、常連のおっさんがたまたま釘が出来ていて回る台に座ったものの、なかなか当たらなくて捨ててしまったと云うような場合は平気でハイエナはする。オレなら自信を持って打つ、という具合に。この場合は自分がこれ見よがしに出して後で恨みがましい目で見られても知った事では無い。いずれにしても、仁義やスジを通す、などと云う自己満足に浸ろうなどと云うつもりは毛頭無い。

まあ、こんなことを思うのも、連日顔を合わせているからであって、初めて入った店ではお構いなしである。先ほども書いたが、そもそも見ただけでプロ、などと思うのは一種の先入観である。クールに打っている人もしくは止め打ちしている人→プロ、熱くなっている人もしくはオヤジ打ちしている人→アマチュア、などと云うのも何やら幼稚なカテゴライズに思える。ま、そんなこと云いながらも実際は見れば雰囲気とかで大体は分かるんだけどね。とにかく、自分のスタイルが釘を見て台を選ぶ、というのであれば、一番釘がいいと思う台を選んで打つのが当然である。とにかく儲けようと思うのであれば、一番利益率が高いと思える台を打つだろう。結局、権利がどうとか、人が打っているからどうとかということは、その店に通って毎日気持ちよく打とう、と思ったときに考えればいいことなのだ。ただし、それも自分と同じような価値観を持った人間にしか通用しないと云うことをお忘れなく。

げにパチンコ屋などと云うところは厄介なものである。鉄火場と云うことか。

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