wonder-ful world vol.12

「不思議なこと その12 嫌な予感」

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なんか忘れているような気がする。それがなんだか思い出せない。こんなときは、要するに何を忘れたのかを忘れているのである(笑)。

たぶんこれは当人の性格やら人間性にもよると思うのだが、僕はとにかくやたら嫌な予感ばかりするのである。よく世間一般に嫌な予感というのは当たると言われるが、じゃあそんなに滅多矢鱈に当たるのかというとそうでもない。恐らく僕の場合は元来神経質だったこともあり、多分に心配性なのだろう。要は嫌な予感というのは、単に不安であるということだったりするのである。

つまるところ、ほんとにそうとは考えたくないのだが、もしかしたらA型という血液型のせいもあるのかもしれない。血液型なんぞで人間がわかってたまるか、と言いたいところだが、何にせよ、何らかの傾向があるのは否めない。実は僕は自分がA型であるということに一時期すごくコンプレックスを抱いていたことがあった。十代のころから血液型なんか信じないぞ、みたいなところはあったのだが、買い物をするときにやたらと優柔不断になってしまう自分には気付いていて、もしかしたらあるのかも、などとは内心思っていた。そのコンプレックスというか、一種の憤りみたいなものが決定的になったのは、就職活動をしていたとき。さる放送局系の音楽出版社を受けたときに、面接の際、きみは血液型は何型かね、と訊かれたのでA型ですと答えた。すると、面接をしていた社長はB型の方がいい曲書くんだよね、とのたまった。この直前に自分でも曲書いたりしてます、みたいな会話があってのことだったのだが、僕はこの血液型で自分を決めつけられたことに非常に憤慨したものだ。結局血液型が災いしたのか、その出版社は落ちてしまい、某大手業界誌に入社したのだが、その会社にやたら明るくてお調子ものの男がいた。僕より年上で既に何か役がついていたのだが、彼はB型である。ある日、彼が女の社員相手に例の如く血液型の話できゃっきゃきゃっきゃと盛り上がっていた。そこで僕は思わず「男が血液型のことなんかで騒いでんじゃねえよ!」と怒鳴ってしまったのである。彼らはしゅんとなってしまったのだが、実際のところは僕自身、忸怩たる思いで一杯だったのだ。だって、要するに血液型を一番気にしてたのは自分だったんだもの。男のコンプレックスって嫌ね...。

あれ、何やらいつのまにか話が脇道にそれたが、僕の場合、家を出た途端に煙草の火を消し忘れたような気がしてたまらなく不安になることがしょっちゅうあるのである。時には我慢できずに途中で引き返して確認してしまったりする。嫌な予感というか、第六感というか、どちらにしても当たりそうではあるが、これが一度も当たった試しがないのだ。にも関わらず、なんでこうしばしばこんな予感にとらわれてしまうのか皆目見当がつかないが、ひとつ考えられることは、随分前の話だが、例の高円寺のボロアパートに住んでいた学生時代、帰ってみると畳に焦げ跡がついていたことがあって、すごくショックだったこと。しかし、こんなことがそういつまでもたいそうなトラウマの如く自分を動かしているとも思えないのだが...却って些細だからこそトラウマ足り得たりするのかな...。

それに限らず、こうなにやら嫌な予感がしてしまうときというのはほんとによくあるのだが、結局のところ的中率はと言うと、実に疑わしい。恐らくは日々何らかの不安を常に抱えているような状態のときというのは、常に喉元まで不安が顔を出しかけているということか。簡単に言うと、こういうことである。取り越し苦労。

まあ、冒頭に書いたように、本当に肝心なことを忘れてしまうようなときと言うのは、嫌な予感などあまりしないものである。僕がいままで忘れたものの中で一番酷い部類に当たるのが、以前某超大物アーティストのディレクターをやっていたころ、これから一ヶ月ほどロスに滞在してレコーディングを行なうというときにパスポートが切れていたこと。何しろ、それに気付いたのが成田のゲート前だったのだ...。

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