母倒れる

母が午前中、デイサービスで嘔吐し、意識を失った。救急車で地元の病院に運ばれてCTを撮り、急性硬膜下血腫と診断され県立中央病院に移送して手術した。手術が終わったのはさっき、日付か変わってからだった。手術は無事終わった。

県立中央病院に運ばれて集中治療室に入ったころには母の意識は戻っていた。僕が話しかけると母は笑った。母の笑顔を見たのはいつ以来だろう。母はここ数カ月とは別人のような優しい目をして、僕が田舎に戻ってから一番いい顔をしていた。僕は号泣した。それから、手術のために母の髪は全部剃られた。

母の右半身には麻痺があり、どこまで回復するかは分からないと医師は言う。母の回復力次第だと。母がまだ生きていることに、母に、亡父に感謝した。

皮肉なことに、デイサービスの施設から病院までの道すがら、救急車の後をついていると、虹が出ていた。

rainbow

病院にいる10時間以上のあいだ、僕の頭の中をぐるぐると思念が回った。昨日も書いたように、人間は己の感情から逃れられないのだろうか、とか。そして、考えれば考えるほど、世界は自意識の中にしか存在しないのだった。結局のところ、人間というのは自分のことしか考えられないものなのだろうか。

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