この病室は4人部屋で、現在僕も入れて3つのベッドが埋まっている。僕以外の2人は老人、と言っても60代中半といったところ。全員が癌患者だ。毎日のように見舞い客が来るのが1人、ごく稀に人が訪ねてくるのが1人、誰も訪ねて来ないのが1人、最後のが僕だ。ところが、驚いたことにそんな僕のもとに来訪者があった。
今日の前半は何故か寝てばかりだった。昼食後も2時まで寝てしまい、寝過ぎて頭痛。そんなわけで目を覚ますために外に出てみると、川沿いの桜はどうやら今日が本当の満開、ちょっと圧倒されるような咲きっぷり。それを眺めながらベンチでいろんな人に電話をかけてみる。しかし母親を除けばことごとく留守電、まあともあれ相変わらずヒマを持て余す。一旦病棟に戻ると、弟が折り返してきたので喋っているとそこにキャッチホン、見ると元妻からだった。で、話してみると、これから見舞いに来てくれると言う。1時間半ぐらい待っただろうか、夕食まで30分、というところで彼女が到着、苺とバナナを届けてくれた。一服しようということで、1階のドトールで飲み物を買い、先程と同じベンチで雑談、外は冷たい風が吹いてすっかり寒く、煙草2本ほどで僕らは病室に戻り、それから帰る元妻をエレベーターまで見送った。ともあれ、この訪問はまったくの予想外だっただけに非常に嬉しかった。ちなみに今日の夕食はビーフカレーで、これまたびっくりした。