業務論、春の雪

3月13日、水曜日。

昨日注文した多少解像度の高いWebカメラがアマゾンから届き、免許証を持ったセルフィーを撮り直して、ようやっとこのところの懸案であった決済システムのbitwalletの認証が夕方に下りた。それにしてもスマホのHuaweiもそうだけれど、最近のこの手の中国製品は精度が高いことに驚かざるを得ない。かつてのメイドインチャイナの印象が、少なくともIT関連では変わりつつある。WiFiルータのTP-Linkも高性能だ。もう中国製かよ……とがっかりする時代ではなくなっている。

今日は昼を挟んでちょっとだけトレードした。昨日はノートレードだし、今週に入ってからびっくりするほど相場のポジションを取る回数が減っている。つまりそれはトレードの環境を整える方にばかり頭が行っているせいなのだが、今日も20ピップス取れたし結果オーライになっている。

今日もまた病院で母の足の傷の手当をするところに遭遇、改めて母の左足の傷を確認してあまりにも酷くて驚いた。以前、少なくとも今年の初めぐらいまでは左足の足首の付け根に沿って傷があったのだが、今日見ると不思議なことにそのあたりの傷は埋まっており、代わりに足首の右側に深い傷があり、足の甲の先の方にも傷が出来ていた。右側の傷は看護師が骨が見えますよというぐらいに白く深い穴になっていた。無残なこと極まりなく、母が可哀そうでならない。もっと早く手術を受けさせたかったといまさらながら思う。

病院には2時半から4時半ごろまでいて、帰りがけに久しぶりに途中にあるドトールに寄って本を読んだ。先日アマゾンから届いたカーティス・フェイス「伝説のトレーダー集団 タートル流投資の魔術」。以前未読のままfragmentsにネットで拾ったレジュメを載せた本だ。タイトルにもあるように、たった二週間の教育を受けただけで驚異的な利益を叩き出したタートルと呼ばれるトレーダーたちが一体何を教えられたのかという非常に興味深い本だ。3分の1ぐらいまで読んだが、驚くのはタートルたちがエッジ(優位性)として教えられたものが業務のボーダーライン理論とほぼ同じであったことだ。つまり確率論に基づいている。考えてみれば当たり前なのかもしれない。問題はトレードに於いてそれを実行するのが人間の感情や心理面から非常に難しいということである。

業務のボーダー理論は非常にシンプルで、回転率がボーダーライン、つまり期待値が0になるラインを上回れば期待値がプラスになるので、回数を重ねていけば確率が収束して結果プラスになるというものだ。もはや非常にポピュラーで、いまどきは雑誌を読む人なら誰でも知っているはず。しかしながらこの理論はシンプルであるが故に非常に強力だ。とにかくボーダーラインを上回る台をひたすら打てばいいだけなのである。そこにはなんら迷いがない。そして釘が読めれば強烈なエッジになる。釘を読んで期待値がプラスの台を判別できれば後はただひたすら打つだけだ。だからいかに酷いツキでまったく当たらなくても、期待値はプラスなのだからと自信を持って打ち続けることができた。

かように業務というのは非常にシンプルかつ強烈なエッジがあるのでいわば釘読み以外は誰にでもできるものだ。この際だからここで釘の読み方を解説してもいいのだがゲージの図を書くのが面倒だ。見るのはたった3か所でいい。ヘソと寄り釘と道釘、これだけである。場合によっては(滅多にない酷い店では)アタッカー周りも見なければならない場合もあるが、そこまでして出玉を削るような店では打たない方が無難。

このように業務のエッジは非常にわかりやすいが、こればかりは自分ではどうしようもない致命的な欠点がある。それは釘を自分で叩けないということだ。つまり、期待値がプラスの台を打ってツキがなくて負けたとする。理論上は同じ期待値の台をひたすら打ち続ければ確率が収束して結果的には勝つことになるが、翌日釘をシメられて期待値がマイナスになっては確率の収束のしようがない。前提となる期待値が変わってしまうのだから。要するに必ずしも今日の釘が残るとは限らないということである。昔僕が通っていた渋谷の店のように、500台ぐらいあってそれなりに定期的に釘の開けシメをする店があれば、釘さえ読めればひとつシメられても他の期待値プラスの釘の台を見つければいい。この場合の業務というのは非常に優位性、つまり明快なエッジがある。ところが困ったことにこれはまったくもって店次第なのだ。あるときから店が方針変更をして全台を期待値マイナスになるように釘をシメられたら(普通によくある)どうしようもない。打つものがないのだから稼働自体がストップしてしまう。このように業務の欠点は環境に決定的に支配されるという点だ。それに加えて最近は規制のせいで仕様上の期待出玉自体が大幅に減っているので、昔よりも期待値プラスの台を見つけるのは遥かに難しい。うちの近辺のように、期待値プラスの台がゼロということが今では当たり前になってしまっている。だがそれは業界自体が自分で自分の首を絞めているのと同様で、この状態が続けばいずれは業界自体が淘汰されてしまうだろう。

おっとつい力説してしまった。話を元に戻すと、トレードは業務のように環境によって期待値が支配されるということはない。だからボーダー理論のようにシンプルかつ絶対的なエッジがあれば物凄く有利なはずなのである。理論上は。しかし、そのエッジというものを見つけるのが物凄く難しい。少なくとも業務に於けるボーダー理論のように絶対的なものはない。簡単な話、未来を予測することはできない。これから相場のレートが上がるか下がるかなんて誰にもわからない。これはつまり負けて当たり前なわけで、負けることもエッジとして組み込まなければならないということ。それはボーダー理論も同じだ。勝ちも負けもあってトータルで勝つ、エッジというものはそういうものだ。

とは思うものの、自分は延々とボーダー理論をやってきた実績はあるものの、相場のトレードとなると不思議なくらいにそういうマインドでできない。いわゆる行動経済学的な落とし穴から抜けることがなかなかできない。例えば利益が出ればすぐに確定したくなって損が出るとなかなか確定したがらない、というような。要するに損小利大ではなく損大利小になってしまう心理構造。理論上はリスクリワードを1:2にしてひたすら試行を重ねれば50%の勝率でプラスになるはず。つまりコインの裏表でトレードしてもプラスになる理屈なのだが、実際はそういう風にいかない。確率論と期待値を信じて鉄面皮で一日10時間も業務で打ち続けられた(それも10年以上にわたって)自分が、同じことを相場ではできない。いまのところ。まったくもって厄介なのは人間の感情と心理だ。自分は長いことそれを克服してきたはずなのだが……。

いい加減長文になってしまった。ドトールに寄って今日の帰りは夕方の6時過ぎになったのだが、帰り道から雪が降り始めた。最初はみぞれ、それからちょっとした吹雪のような降り方に。例年であれば3月に雪が降ることなど当たり前なのだけれど、今年はもうすっかり春になったつもりでいるのでちょっと驚いた。いずれにせよ、一晩中降り続かない限り積もったりはしないだろうけど。

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