連鎖

2月16日、日曜日。

昨日の日記にも書いたが、悪意は伝染し、連鎖する。それ自体が増殖する。今日のことを逐一具体的に書く気にはなれない。ただ今の僕は病気だ。母が夕食を終えたころ、病院のエレベーターで降りる際に鏡に映った自分の顔はまるで死体のように青ざめていた。

たぶん僕と彼女は同じような状態にある。お互いに相手に自分の方が深く傷付けられたと思っていて、相手が先に傷付けたと思っている。お互いに相手が先に優しくなるのを待っている。四六時中相手のことを考えて、悪いことしか頭に浮かばなくなる。結局のところ、彼女は僕自身に内在する自己矛盾そのものだ。

長いこと生きてきたがこういう経験は初めてで、それが世間でよくあること、つまり普遍的なことなのか、それとも滅多にない特別なことなのかもよく分からない。楽譜で言えばエンディングのリピート記号にFade Outと書いてあるようなもので、永遠に同じことを繰り返すような気がする。ただFade Outなわけだからいつかは消えてなくなるのだが。つまり僕らは水と油のように決して混じらずにずっと平行線を辿っているわけではなく、ただ同じことを繰り返しているだけのような気がする。Fade Outと違うのは、だんだん小さくなって消えていくのではなく、繰り返すたびに傷が深くなっていくということである。ということは一見Fade Outとは逆にクレシェンドしているようにも見えるが、このまま傷が深くなり続ければいずれは自分の存在よりも傷が大きくなって、自分自身が消えてしまうのだろう。だが、そんなことはあり得るのだろうか?

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