反転

8時起床。どういうわけかまた朝に目が覚める。月曜に病院で血圧を計ったら上が118あったので、血圧がやっぱり戻ったのだろう。これまでのところ、副作用も今回はそれほどきつくない。まだ。今日も朝から暑い日だった。出掛けにコンビニに寄ってスティックのりを買い、ドトールに寄って封筒に封をして、郵便局でマンションの契約更新書を投函してから業務へ。で、昼過ぎにとんでもないことが起こった。業務中、ふと、僕は今ひたすら何かが起こるのを待っているだけだと思った途端、これは長い点滴にひたすら耐えているのとなんら変わりないのではないかと思ってしまい、その瞬間からモチベーションというものを喪ってしまった。正確には、何かを「行う」という意識が、「行わない」という意識に反転してしまった。それと同時にあらゆる意識がプラスからマイナスへと転じてしまったのだ。これに近いことは何年かに一度ぐらいの割合でタマに起こる。今回はあまりにも見事に意識が向こう側に転がってしまった。僕は即座に放り出してスーパーで夕飯を買って家路に就いた。ありとあらゆるモチベーションというものを喪失してしまった僕には、希望というものはもはや何一つ残されておらず、あるのはただの形のない絶望だけだった。こうなると一度意識をシャットダウンして再起動するしかないと思い、帰宅してソファに寝転がって寝ようとした。しかし、眠れなかった。もしかしたら10分ぐらいはうとうとしたのかも知れないが、感覚的にはまったく眠れなかった。しょうがないのでYouTubeでマイルスの古いアルバムをかけて、終盤に差し掛かったフォークナーの「響きと怒り」を読み始めると、なんだか少し楽になって来た。それは恐らく、自分が読むという行為を拒絶せずに成し得ていたからだと思う。ある方向に向かっていたからだと思う。で、遂に読み終わった。確かに上巻、つまり1部と2部は時制がめまぐるしく変わって難解きわまりないが、そこを通り過ぎると鮮やかに物語が浮かび上がるのは見事だった。スーパーで買ってきた鮨の夕飯を食べると、U-20の女子の試合を見てから、ネガティブな意識を掃除するために、YouTubeでタモリの昔の番組をひたすら見続け、腹の底から笑った。スポーツ以外のバラエティのダイジェストをこんなに見続けるのは近年滅多にない。そのうち深夜になり、またYouTubeでハウスのアルバムをかけて、それに合わせてリズムギターを延々と弾いた。いい練習になるし、頭が空っぽになる。こうして僕は自意識の危機からなんとか脱した、というわけだ。

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