カウントダウン

まだ夕方の7時を回ったばかりだ。ビル・エヴァンスを聴きながらこれを書いている。先ほど父の担当医から携帯に電話があって、父は今晩か明日には亡くなるだろうとのことだった。早めに夕飯を済ませて、父の遺体を置く予定の座敷を片付けて。後は何をしていいのか分からない。ひたすら片付け続けて備えるべきなのかもしれないが、正直言ってそこまで物事をやり続けるだけの気力が今の僕にはない。何かを完璧にやり遂げるほどの精神力がない。かといって、このままただ病院からの連絡をひたすら待つのもいたたまれない。母に会いに行きたいけれど、正気ではない母に会っても何も出来ないし、何の慰めにもならないし、ただダメージを受けるだけだろう。もし父が亡くなっても、今の状態では母にそれを知らせることも出来ない。悪い状態の母に知らせることは出来ない。

僕は弟が嫌いになってしまった。父の葬儀の手筈を任せている叔父も、母の入院時に世話になった叔父も、みんな嫌いになりそうだ。いつまでこの悪夢は続くのだろう。いつになったら、この一連の悪夢は終わるのだろう。結局のところ、僕に出来るのは、何かが終わるのをただ待つことだけではないのか。まったく、こんな風に生きるのは救い難い。考えてみれば、僕は今朝目が覚めたときから既に絶望していたのだった。

しんと静まり返っただだっ広い家で、ただビル・エヴァンスのピアノだけが漂っている。そして僕は蒼ざめた顔をして、なすすべもなくただ待っている。胸がつぶれそうって、こういうことを言うのだな、と僕は思う。

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