死の淵より

午後、3時ごろに業務を終えての帰り道、父の具合が気になったので母親の携帯に電話してみた。すると、病院にいると言う。父は昼過ぎに重度の低酸素血症で救急車で運ばれ、集中治療室で人工呼吸を受けている、と言うのだ。父の血中酸素は通常の5分の1ほどしかなく、かなり危険な状態だったと言う。昨日の父の「俺は今日死ぬ」という発言が蘇る。常に不安に陥らないために意図的に避けてきた「未来」や「将来」というものを、否応なく考えざるを得なかった。もちろん僕は既に抑うつ状態になっていた。電話をひたすら待っているのも辛いので、頓服を飲んでソファで眠った。母親からの電話で起こされ、酸素マスクは外せないものの、どうやらいい方向に向かっている、ということだった。しかし、昼寝しても頭痛は一向に治まらず、悪心がして、夜までソファで延々と天井を見ながら呆然とするしかなかった。頭痛薬と頓服の両方を飲み、9時を回るころにようやく頭痛が治まってきた。その間に何度も携帯に手が伸びたが、かけることはためらわれた。すると、10時近くになって母親から連絡があり、今晩は病院に泊まるということだった。寝ている間に酸素吸入マスクが外れると悪いので、ということだったが、今度はむしろ母親の方が心配になり、まさか寝ずに見ているわけにもいかないだろう、と僕は言って、無理しないように釘を刺しておいた。それから気分転換のためにスーパーに買い物に出かけたが、酸素マスクのことを考えるとまた不安になってきた。もし外れたらどうなるのだろう?

こうして父はなんとか一命を取り留め、寿命が延びたが、僕の寿命は縮まった。

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