雷と大惨事

7月22日、水曜日。

何かと驚くべき日だった。

昨夜寝たのは3時過ぎ、結局相場のポジションは含み損を抱えたまま目をつぶって今日まで持ち越した。何度寝かしてなんとか9時半過ぎに起床。朝から一日中相場のチャートと日がな睨めっこして夜まで過ごす。

今日はとにかく暴力的に暑かった。あんまり暑いので家中の窓という窓を開け放っていたのだが、それでも台所の室温は36度に達した。無茶苦茶暑い。あんまり暑いのでさすがに午後3時ぐらいから冷房のある茶の間に避難。結局夕方母のところに行くぎりぎりまで相場のチャートを睨んでいたが、状況は一向に好転しなかった。さすがに疲れ果て、もうどこで損切りしようかと考える。

6時半ごろになって母のところに向かうと、遠くで雷が鳴ってるなと思った。特養に着くとなんだかふらふらして気分が悪い。相場のポジションも放置したままだし、今日はあまり長くいれないなと思った。母を部屋に連れていってベッドに寝かせるころには、雷の音が凄くなっていた。鉄筋の特養の建物の中でも十分に聞こえるほど凄い。30分ほどいて僕が帰ろうとすると母が雷のことを盛んに心配した。どうやら雨が降り出したようで、廊下を歩いていると雨の音も聞こえる。玄関で靴を履いていると、当直の人が「風が凄いから今出るのは無理」と僕に声をかけてきた。「風?」と思ったがそのまま玄関から外に出ると、叩きつけるような横殴りの土砂降りの雨が降っていた。外は雷鳴が轟き、稲光が走る。物凄い雨だった。

帰宅して、相場のチャートを見るとちょっとマシになっていて、ようやく損切り出来そうかなと思った。すると、落雷の音が轟き、同時に電気が消えた。

停電だと思ったのだが、台所の窓から外を見ると近所の家は明かりがついている。それで懐中電灯を持ってブレーカーを見に行くと、案の定落ちていた。ブレーカーを戻し電気が回復すると、窓を開けっ放しにしていた書斎の床がびしょ濡れになっていることに気づく。驚いて窓を閉める。それから同じく窓を開けっ放しにしていた両親の寝室を見に行くと、こちらもびしょ濡れ、ベッドの上の布団までずぶ濡れになっていた。これはそうとう猛烈な雨が降ったのだなと思い、台所に戻る。何故か窓を開けていた台所は大丈夫で、どうやら南側から雨は吹きつけたらしい。

とそこで、二階の窓も開けっ放しにしていたことに気づいた。何しろ日中、二階は温室みたいに猛烈な暑さになっていたので。慌てて二階を見に行くと、大変なことになっていた。風の通りをよくするために廊下の窓と自室の窓の両方を開けていたのだが、布団から何から部屋中水浸し、窓際の植木鉢はひっくり返って散乱している。おまけに驚いたことに廊下の窓の網戸が吹き飛ばされていた。そこでようやく、特養の当直の人が言っていた「風」とはこれだったのかと気づく。物凄い突風が吹いたようだ。とにかくひっくり返った植木鉢を外に出し、土やら石やらが散らばったのを箒で掃く。しかし何せそこら中がずぶ濡れ、どうしようもない。これでは二階の自室は夜寝るどころか当分使い物にならない。それに、マットレスから敷布団から掛布団から肌布団まで、すべてずぶ濡れである。ひとまずびしょびしょに濡れたシーツ代わりのマルチカバーと肌布団を洗濯機に放り込む。網戸が吹き飛んでしまった枠を外して台所に持って行く。代わりの網も足りないし張る道具も見つからないので明日ホームセンターにでも持って行くしかなさそうだ。

一旦台所に戻って呆然としそうになるが、とにかく夕飯の支度をする。サバ缶の簡単な夕飯を食べながら、まったく踏んだり蹴ったりだなと思う。実家に戻って以来、台風でもこんなことになったことがない。すべては窓を開けていたのが敗因だった。雷恐るべし。見ると、相場がようやく奇跡的に好転していた。二日がかりでなんとか申し訳程度のプラスに。

猛烈な雨もいつの間にかぱたりと止んだ。一雨降って涼しくなりそうなものだが(実際外の気温は下がったようだった)、台所はかえって蒸した。はたと気づいてまた二階に上がって、ずぶ濡れになったマットレスと敷布団を廊下に並べ、同じく濡れた掛布団と肌布団を無事だった弟の部屋に並べて広げた。風呂から上がると滝のような汗をかく。台所で風呂上がりの一服をしようとするとまた電気が消えた。今度は本当の停電だった。ほんの1分程度で回復したからいいようなものの。考えてみれば、書斎のずぶ濡れになった窓際近くに置いていたルータと無線LANの親機も水を被ったようだが、無事だったので助かった。もしダメになっていたら相場も決済できないわけで大変なことになるところだった。不幸中の幸いというべきか。

書斎と両親の寝室、二階の自室の3部屋が水浸しになったわけだが、こういうときは普段一人暮らしには無駄に広い6LDKの家が役に立って、幸い寝る場所はある。今夜のところは冷房のある茶の間に布団を敷いて寝ることにする。しかし、水浸しになった3部屋を乾かしたいのだが予報では明日から3日間雨、今夜一晩窓を開けておきたいところだが窓を開けていたがためにずぶ濡れになってしまったのでどうにも怖くて。まさかまた横殴りの猛烈な雨が降るとは思えないが。しかしさすがに気が進まない。3日間雨では濡れてしまった寝具を干すことも出来ない。二階の窓の障子も濡れて台無しになってしまったので張り替えなくてはならない。踏んだり蹴ったりというか散々である。地震雷というが、まったくもって雷は侮れない。というか、窓を開けっ放しにして出かけるからこういうことになるのだな……。

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