5月26日、土曜日。
今日も暑かった。途中からTシャツ1枚になった。
夜、前々からやろうと思っていた、以前書いた小説を直そうと読み返した。17年前、初めて書いた長編小説、「ホリデイズ」である。正確に言えば初めて小説を書いたのは中学生のときで、授業の課題として書いたものと、クラスで持ち回りで回っていたノートに書き殴った短編のどちらかが最初だけれど、どっちか忘れてしまった。授業の課題で書いたものは何か(忘れてしまった)海外の小説の続きを書くというものだった。一方でノートに書き殴ったのは筒井康隆に影響されたスラップスティックだった。どっちも皆の前で先生に読まれて恥ずかしかったのを覚えている。
「ホリデイズ」を書いたのはそれからなんと25年も経ってからである。
「ホリデイズ」で気になっているのは冒頭の濡れ場の部分で、そこだけがリアル過ぎるというか生々し過ぎるかなと気になっていた。気になるといえば書き出しも気になる。しかしながら、これを書くきっかけとなったのは冒頭の一行(遠くで犬の声がする)からだったし、初めて会った女の子に睡眠薬を盛られるという実体験に基づいているので、今読み直しても冒頭だけがアンバランスな感じがするもののなかなかどう直したものか分からない。どうもそこだけがポルノグラフィーのような気がするものの、そこをばっさりと切り捨てるわけにもいかない。結局そこだけを読者に我慢してもらえれば済む話なのだが、そこでうんざりされるのも困ったものだ。
結局、細かいところ(例えば煙草を喫う→吸う)を直すだけに留めた。で、久しぶりに読み返すと、これが驚いたことに案外と面白くて止まらないのである。さらに驚いたことというか、ある意味まったく馬鹿げたことだが、最後の方を読んでちょっと感動してしまった。自分で書いたものだから、つまりは感性がまったく同一なのだから考えてみれば面白いと思って当たり前なのかもしれない。いまさらながら、書いた当時は正直ミステリーとしては粗が多すぎるのではないかと思っていたが、その辺は存外気にならなかった。不思議なことに。なんつーか、青春ハードボイルド(笑)としてはこれでいいのかもしれないなと。
この小説は書きながら考えたもの、つまりまったくアドリブで書いたもので、最後の方はどう辻褄を合わせようか物凄く悩んだ覚えがある。それで結局強引で大雑把な力業になってしまい、精緻なトリックとは程遠いものになってしまった。どう収拾をつけるか、どう終わらせるかまったく分からないままで書いていたので当たり前なのだけれど。
とはいうものの、この小説は僕が書いたもので唯一一度だけ自分で足を運んで取材をしたものなので、途中は自分で思っていた以上に説得力やリアリティがある。つか、取材とは言っても一日だけ小平に行って歩き回ったというだけなんだけれども。ただ小平の市役所も実際に足を運んだ場所なので、そういう意味では当たり前だがよく書けている。あの暑い夏の日も随分遠くになってしまった。途中、青梅街道沿いの中華料理屋で冷やし中華を食べたのを覚えている。
前述のようにミステリーとしては欠点が物凄く多いんだけれども、あの年、熱にうなされたように書いた当時の熱量を感じる。それだけで十分かなと。少なくとも、えっ、なにこれ?と疑問符がつくようなものではなかった。そもそもトリックを読ませるものとして書いたものではなく、睡眠薬を盛られたというただそのことだけから物語をひとつ書いたに過ぎない。
ま、そんなわけでもうちょっと直したら、またどっかの新人賞にでも出してみようかなと思っております。