売却

7月9日、木曜日。

考えてみると、5月10日の母の誕生日以来、かれこれ2ヶ月あまり弟が母の見舞いに来ていない。基本的に弟は用件がないと電話もかけてこないので、ここしばらく電話でも話していない。しかし特養に入所してからの母は、会話のレスポンスが悪くて話がまったく広がらないし続かないので、無理からぬことである。わざわざ片道1時間半かけて仙台からやってきても、話しかけるほどストレスが溜まるだけだから。

昨日あれだけ長広舌をぶってしまったので、今日は母のところに顔を出すのに少々気遅れした。夕食後行ってみると、ちょうど昨日喧々諤々と話をした若い介護士がいたので、言いたい放題言ってすみませんとお互いにペコペコと米つきバッタのように頭を下げ合った。母は相変わらず茫洋としていて、言い方を変えれば大人しい。僕が喋らないといつまでも黙っている。自分から話すことはほとんどない。ときどきぼそりと、ダメだとかわからないというようなことをこぼすだけだ。しかしオープンダイアローグを持ちだすまでもなく、それでも母に話しかけることは大事だ。正直しんどいけれど、それでも根気強く話しかける。これが僕の日課だから。

今日は日中暑かった。夜になって家中の窓という窓を開けっ放しにしてようやく涼しくはなったけれど、夕方でも台所の室温は30度あったし、夜母のところから戻ってくるとむっとするほど部屋の中は暑かった。

本日も朝から夕方までは相場。今日も難しい相場だった。特に午前中は中国株のバブル崩壊に振り回される。今日も今日とて、3回もストップを切らされたけれど、午後から夕方までの乱高下になんとかついていけて結果プラス、ようやく一矢報いたという感じ。そんなわけでせっかくいい感じでポジションを持てたのだが、ちょうど一番動いている頃合に昨日電話連絡があった古物商がやってきたので、ちょっと利食いが早くなってしまったのが残念。

古物商は新潟からやってきたということで、電話によると切手を買い取ってくれるということだった。それで父が集めた大量のお年玉年賀切手の束と、母のストックブックにあった記念切手を全部売り払った。もはや僕の子供のころのような切手ブームではなく、50円以上の切手は額面の55%(50円以下の切手はもっと割が悪い)ということで、全部で13400円也。せっせと集めた父と母には申し訳ないけれど、今の郵便料金は52円と82円という中途半端なものなので2円切手を買わないと単独で使えるものがないし、それにあまりにも大量にあってとても使いきれないのだった。記念切手を眺めてああ綺麗だと思ってももうしょうがないと思った。それに、そういう気持ちももうあまり湧かないのである。1枚残らず全部売り払うというのは勇気が少々いったけれども。もちろん貧乏性の性格というのもあるけれども、なんとなく父と母の思い出を売り払ってしまったような感じはどこかするのであった。プチ罪悪感。

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