旧交を温める

10月12日、木曜日。

昨日の日記には書かなかったんだけど、夕方、近所の洋菓子屋に茶菓子を買いに行こうと散歩がてら出かけて結局店は定休日だったんだけれども、その店の手前の角が中学の同級生のニシダの会社というか工場で、前を通ったらちょうど事務所にぽつんと一人でいるニシダが見えて一瞬目が合ったような気がした。ただ確信がなかったのでそのまま通り過ぎてしまい、もう一度前を通るのもなんか気まずい気がしたので帰りは別の道を通って帰ったのだった。そういえばニシダとはかれこれ二年か三年ほど会っておらず、最後に電話で喋ったのも半年か一年ぐらい前だったように思う。考えてみれば小中学校と一緒だったのだが特に親しかったわけでも親しくなかったわけでもなく、なので敢えて友人と呼べるかどうかは怪しいのだが、確か三年ぐらい前にニシダが突然うちを訪ねてきたのだった。以来、何度かメシを食おうとか誘われたのだけれど、ほとんどが酒の場の話だったので断っていた。飲めないから酔っ払いの相手をするのはごめんなので。ただなんとなく昨日のことが気になって、今日も夕方の5時過ぎになって昨日の店に再び買い物に歩いて出たんだけれど、事務所にいたら声をかけようと思っていた。

ちょうどニシダの会社の前にさしかかると従業員が車で帰るところで、僕が事務所の前に到着するころに最後の車が出ていった。昨日と同じようにニシダは一人事務所に座って何事か仕事をしていた。仕事中みたいなので悪いかなと思ったのだが、昨日のように素通りするのもよくないと思い、ドアのガラス窓をノックした。

ニシダは珈琲を淹れてくれて小一時間ばかり世間話をした。ニシダの会社というか工場はスリッパを作っているのだが、今の従業員は何人いるのか訊いてみると6人だそうだが、一番多いときは30人いたというので驚いた。とすると、最盛期は月に給料だけで少なくとも500万は払っていたわけだが、それだけ経費をかけても採算が合うほどスリッパを作るということがイメージ出来ないのだった。そもそもスリッパにそれほどの需要があるものだろうかと。実際今でも月に人件費は100万はかかっているはずだから、世の中の仕組みというか、たかがスリッパといえどもそれだけのなんていうかサイクルみたいなものが常に回っているのだと思うと実に不思議だ。まあそれはスリッパだけではなく何に関しても当てはまるのだけれど。

例えば今目の前の机の上にシャープペンシルの芯が2ケースあるのだけれど、考えてみるとこれほど滅多に買わないものも珍しい。普通の人がどれだけのペースでシャープペンシルの芯を替えるのか分からないけれど、ひとつ買えば少なくとも5年から下手すると10年ぐらいもつ。これぐらい滅多に買わないものであっても、ひとケース200円とかで作って採算が合うというか、常に作り続けているということ自体がなんか不思議に思えるのだった。1本200円ならまだ分かるが40本入りで200円。1本5円。これで利益が出るのだから、原価は一体いかばかりなのか、実に不思議に思えるのだ。まあそういうことは何にでも当てはまるのだけれど、経済の成り立ち方というのが自分には実に奇怪なことに思える。

もう何年も電車に乗ってないけれど、田舎に帰るときに新幹線で米沢とかの田舎の駅に停まる。夕方の帰宅時間であればホームには中学生やら高校生やらがごった返しているのだが、いまどきの彼らはみんなスマホを持っている。こんな田舎でも中高生がみんなスマホを持っているとは、田舎の経済は一体どうやって成り立っているのであろうか。などと。だってスマホの料金も月辺り馬鹿にならないじゃん。

というようなこともニシダと久しぶりに話をしたことで思い出した。

長くなるので以下略。としたいところなのだが、今日のことで敢えて書くとすれば今日も昼過ぎから業務に行ってみて、リサーチがてら一通り見ていろんな台を試してみたのだけれど、いよいよもってもう使えるものはない、という結論に達した。シメ過ぎ。もう既に客が飛び始めているし、この調子では遠からずこの店も立ち行かなくなって閉店に追い込まれるだろう。それでも1台でも使えるものがあればいいと言えないこともないのだが、今日見たところでは見た目マシな2・3台は見た目よりも回らないかスペック(期待出玉)的に勝てるわけないというものしかなかった。もしかしたらいつかはどれかをアケるかもしれないが、何せ町に一軒しかない店、そんな宝探しのような確率ではちょっとやってられん。もちろんこれまでの経験上、都内に住んでいたときも武蔵浦和に住んでいたときも、駅前に何軒あってもひとつ残らず全滅というのは珍しいことではなかった。しかしながらこれで情報が出回っているように年明けに出玉を3分の2にするという規制が入ってそれでも状況が変わらなければさすがに業界として滅亡するのではないかと。っていうか、アホみたいにアケなければ誰も打たなくなると思われ。つまりこれからはギャンブルではなくてゲームセンター的な営業にしないととてもじゃないが生き残れないと思う。でもって、ゲームセンターには用はない。なので、今日のところはひとつの終焉を垣間見た思い。そんなわけなので、もう貯玉を全部交換してしまおうかなと考慮中。とすると、本当に業務からは足を洗うことになるのだが。はてさて。

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