ホテルを予約してみる

11月10日、金曜日。

なにかと脱力する。

という具合に今週の中ではもっとも早い時間に起きたのだけれど、中途半端なことに変わりはなく、よってさしたる効果もなかった。朝食後に相場の想定をしたものの、どうも相場自体がうだうだの雰囲気で指値を置く気にもなれず。というのも今日は3時半に歯医者の予約があるし夜はサッカー日本代表の親善試合、ブラジル戦があるから。中途半端に手は出せず、しょうがないので歯医者までの時間潰しに業務に行ってみる。が、ツキなし。煙草だけゲットして帰る。帰宅後少々昼寝。のち歯医者。帰り道にそのまま母のところに寄る。

で、母のところから帰る頃合には妙な具合になっていた。

これはまったくの単なる思いつきに過ぎないのだが、明日からの土日にまったく何の予定もなく、ただ業務や昼寝で時間を潰すのも嫌だなあと思ったので、つい母に旅行に行くかも、などと言ってしまったのだった。そんなことを口してしまった手前、帰宅後に土日月辺りの都内のホテルを調べる。渋谷辺りで探すも相変わらずたっかいなあと思い、たまに妙に安いと思うものはカプセルホテルだったり。で、あれこれ検索しているうちにBooking.comというところで2泊していくら、という具合に探せてむしろその方が安いということが分かり、この際東京じゃなくてもいいやとさいたま市で検索してみると逆に高かったり。どっちにしても明日の土曜日からというのはいまいちで、明後日の日曜から2泊の方が安いということが判明、で、都内だけじゃなくて武蔵浦和とかにも行きたいので赤羽辺りで探すとちょうど安いホテルがあった。2泊して1万5000円ちょっと。なんか山形のホテルより安い。駅前だし。ということで、そのまま予約したものか悩む。一時期、とにかくホテルに泊まりたいという欲求があった時期があって、もう土日に山形市内のホテルに泊まろうかなどと考えたことまであったのだが、そういったホテルに泊まりたいという欲求はもう醒めてる。ルームサービスが使えるホテルなら泊まりたくないわけではないが、そういうホテルは高い。で、これまで何度も東京行きを思いつくたびに挫けてきたのは、一体何をしに行くのかという目的が何もないからなのだった。行ってどうするの?と自分に問いかけると何も答えは返って来ず、たぶん退屈するだけだろうな的なことが頭に去来する。で、断念するということの繰り返しだった。そういう意味では今回とてそうなのだが、なんていうか、これを逃すと冬になって雪が積もっている間は家を空ける気になれないのでまたしばらく行けなくなるだろうということと、考えてみるともう5年近く東京方面に行ってないわけで、さしたる目的や用事がないにしても5年に一度ぐらいは行ってもいいんじゃないかと。そんなわけで、夜、ブラジル戦のハーフタイムの間に、ついに予約ボタンをポチってしまった。

ああどうしよう。キャンセルしようか。などと、予約した途端に後悔している自分がいて。どっちにしたって退屈することは同じなので、だったら行ってもいいかという気がしないでもないが、さりとてこの歳になるといまさら僕に会いたいなどという人がいるとは到底思えない。とりあえず頭に浮かんだのは、先日読んだ後藤明生の「挟み撃ち」的に、昔住んでいたところをひとつずつ回るということ。「挟み撃ち」の主人公は訪ねた先でそれぞれその地の人と会って話したりしているのだが、僕の場合は敢えて訪ねる人とてなく、ただ単に5年経つとどう変わってるんだろうかぐらいの興味しかない。誰かと会うとしたら同級生のジョン、それからバンドのヨウタロウとヤマザキ、雲母社時代の同僚のユカリと松任谷さんぐらいしか思いつかない。かつての同僚のヒビヤはちょっとタイミング的に難しいだろう。いずれにせよ、どのみち今回行かないと下手すると10年ぐらい行かない感じがしないでもないので、苦手な新幹線を片道3時間我慢するのも致し方ないか。

だが一体、人は何のために旅をするのだろうか? 昔の俺はなんで毎年夏になると長野に行っていたのだろうか? なんでほぼ三日寝ないで車で京都に行ったりしたのだろうか? もうそういったことが思い出せないのである。気がつくと、自分がおのぼりさんそのものになっていることに気づく。字面どおりのおのぼりさんでもあり、リップヴァンウィンクル的なおのぼりさん、つまり時代に取り残された人間としてのおのぼりさんでもある。要するに、今これを書いているこの実家、ここにしか自分の居場所はもうないような気がしてしまうのだった。

それはともかくとして、一応宿泊を予約してしまったからには、ということで、ブラジル戦が終わってからジョン、ヨウタロウ、ヤマザキ、ユカリの順に電話をかけてみたが、誰一人出なかった。ここのところ誰かに電話するということをすっかり出来ないでいたので、いつの間にか「電話には出ない」ということが世の中のスタンダードとなっているのだろうか。それとも、週末の夜に電話なんかすんなよ、ということなのだろうか。はて。

ああこんなことをしている間に日付は変わり、予約をキャンセルするにしても前日になっちゃったからキャンセル料は発生しちゃうだろうな。もう諦めて行くしかない。誰もいなくても、そこに何もなくても。

というわけでポチってから心は千々に揺れているのだが、肝心のブラジル戦はというと、前半に早々と3失点してしまうという案の定の完敗だった。アギーレジャパン時代にシンガポールでブラジルと対戦したときは4-0で手も足も出なかったが、今回の日本代表が当時よりも強いかというとまったくそういう気がしないので、同じように惨敗するであろうことは普通に予想できたし、だから期待もしていなかった。先発に昌子の名前がなかったのでテンションはさらに落ち、興味は大迫が点を取るか取らないかだけぐらいになっていた。大体に於いて、最近しばしばこの日記でも書いているように、かつては日本代表を応援するのが自分の中では一番だったのだが、去年ぐらいから代表よりも鹿島アントラーズを応援する方がずっと楽しいということに目覚めてしまったのだった。なので今日の試合は負けて当たり前、特に悔しいとも思わない。後半になってブラジルがメンバーも変えてきてうだうだのサッカーをするようになり、一見日本代表がよくなったように見え、実際にセットプレーから槙野のヘッドで1点は返したものの、そこはそれで、ブラジルが前半の攻撃をゲーム全体を通して貫き通していればもっとボコボコに点を取られていたのは間違いない。それぐらいの差があった。もうパススピードからして全然違う。スピード、強度、技術、あらゆる面で凄い差があった。特に攻撃面ではこれじゃちょっとどうにもならんなと思うぐらいに物足りなかった。唯一、後半交代で入った森岡がちょっとらしいパスを出したぐらいかな……。そこも結局浅野がシュートすらできなかった。分かってはいたものの、ここまで差があるとちょっとしらける。日本に足りないラストピースはなんだろうと思うものの、例えばここに柴崎岳を入れたぐらいで劇的に変わるとも思えない。前半を見ていて結構ショックだったのは、中盤の3人、特に長谷部がまったく機能しなかったことだ。アジア勢相手では長谷部がいるといないのとではゲームの落ち着き具合が違うという具合に見えていたけれど、いざブラジルと対するとまったく役に立たない、歯が立たなかった。これは一朝一夕では強くなれないぞと改めて思った。

というわけなので、日本代表に対する期待値が改めてまた下がったというところ。正直ベルギー戦もあまり期待はできない。

さて、夜も更けた。ところで、本当に明後日から東京に行くのだろうか? このままだと行かざるを得ないが……。

続く。

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