7月3日、火曜日。
昨夜、一応10時過ぎに仮眠を取ろうと試みたのだがまったく眠れそうな気配はなく、結局一睡もしないで朝まで試合を見た。
日本 2-3 ベルギー。
とにかく凄い試合だった。前半メッタメタに攻められ続けてそれでもなんとか0-0で耐えたところは、クラブW杯の準決勝、鹿島対アトレチコ・ナシオナル戦を想起させた。あのときは気がつくと後半で3点取って終わってみると南米代表に3-0で鹿島が勝っていたという。ということは……。それにしても茶の間の冷房効かないな……。みたいな妄想を抱きつつ後半キックオフ。すると、開始直後に柴崎から原口に物凄い精度のスルーパスがものの見事に通って原口のゴールでなんと日本が先制。ええっ、ホントかよ、などと思っている間に今度は乾が無回転のミドルを決めて2-0。ええええ。なんじゃこれは? ホントにアトレチコ・ナシオナル戦みたいになるのか? などと思ったのだが後半残り時間はまだ30分以上あるのだった。
ホントにこれは勝てるのか? このまま勝っちゃうのか? などと思うものの、どうにもそうは思えない。その、ベルギー相手に30分無失点でいられるとは思えない。と思っていたら案の定川島がやらかした。特にシュートってわけでもないベルギーのヘディングの折り返しを被ってしまってそのままゴール。結果的にはこれが痛かった。今大会、毎回そうなのだが川島のポジショニングが悪過ぎる。曽ヶ端だったらなと何度思ったことか。嫌な予感全開したところでベルギーは190cm以上あるフェライニ投入。これが一番怖かった。
で、またまた案の定そのフェライニにヘッドで決められ2-2の同点に。なんだよ簡単に追いつかれるな感。これが日本が一番やられたくないパターン。と、ここで西野が足が攣った原口に代えて本田はまだいいがなんと柴崎に代えて山口蛍投入。唖然。思わず、「蛍はやめて」とツイートした。ポーランド戦の山口を西野は見ていなかったのだろうか。それでなくてもここ数試合の代表での山口の出来は酷過ぎた。そして今回もまた。で、アディショナルタイムの最後の最後、コーナーキックからのカウンターで遂にやられてしまった……。
いずれにせよ、夢を見た。それはたったの17分間に過ぎなかったかもしれないが、寝ているわけでもないのに(そして実際まったく眠くもなかったが)僕らは夢を見た。日本がベストエイトに進む夢を。だが終わってみると力通りの結果になっていた。そしてこれがワールドカップというものなのだった。
ともあれ、もうずうーーーっと前から柴崎を応援し続けて、鹿島時代から、代表に全然呼ばれなくなっている間も応援し続けて、とうとうワールドカップ本番が始まった途端に何故か日本代表は柴崎のチームになっていた。これこそが僕がずっと夢見ていたことだった。どの試合を見ても、誰がどう見ても柴崎のチームになっていた。そして皮肉なことに、そのためにメンバーを落とした3戦目のポーランド戦でも柴崎をフルで使うことになり、結果一番重要な局面、一番彼が必要なときに交代でいなくなり、逆転されることになってしまった。西野としては3戦フルで使った柴崎の疲労を考慮したかあるいは守りを固めるという意志だったのか。ともあれ今日の柴崎は疲れからか前半はパスミスも2回ほどあり、イエローカードも1枚受けていた。たぶん山口に代えたのはそのイエローカードも大きかったのだろう。がしかし、これまで異常なまでのツキに恵まれていた西野のギャンブルもここで運が尽きた。守るのであれば植田を、攻めるのであれば大島を投入すべきだった。最後に切るカードを間違えてしまった。というか、山口蛍が自分が投入された意味を分かっていなかった。
結局こうして日本はまたしてもベスト16で敗れてしまった。しかし不思議な満足感があった。一睡もしないで朝の5時を回っているというのにちっとも眠くなかった。試合終了と同時に昌子はピッチを何度も叩いて泣いて悔しがった。昌子は本当によくやった。海外に行くべきという声が多いが悪いけど鹿島で頑張って欲しい。乾も原口も泣いていた。試合後のインタビューではなかなか言葉を見つけられない選手たちがいた。彼らは本当に悔しがっていた。FIFAランキングで3位のベルギーをあと少しのところまで追いつめ、実際に勝てたかもしれない試合だった。しかしながら、2-3という結果は妥当なものに思えた。たぶん延長戦に突入していたとしても同じような結果になったろう。延長に入ってから疲れていない柴崎を投入できるのなら別だが。とにかく、この2-3という結果は、あまりにも明確に今の日本代表の力を残酷なまでに示していた。よくやったけれど勝てない、という。
何はともあれ、今回のワールドカップで、柴崎岳という選手の才能に多くの人たちが気づいたこと、それだけで個人的には満足としておきたい。この後岳にどれだけのオファーがあるのかは分からないけど。何度も言うようだけど昌子は鹿島に残って欲しい。
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というようなわけで朝の6時半に睡眠薬と安定剤を飲んで寝る羽目になった。12時半に目が覚めると布団も浴衣もはだけてほぼ全裸だった。何しろ昨日から異様なまでに暑いし、一方で一日中冷房に当たっているからある意味冷房病っぽいところもあるし、睡眠もいまひとつ足りないしで今日は疲れ果てて頭痛もするわであまり使い物にならなかった。どうでもいいけど台所は日中34度あった。これでは普通に家の中にいても熱中症になる。
ああ、改めて日本のワールドカップは終わってしまったのだな。また四年待たなければならないのだな。そして、その四年間をまた楽しめるということでもあるのだな。もうちょっとで届きそうな世界はなかなか届かない。でもたぶんそれだからこそお楽しみはまだまだあるのだ。何にせよ、ただただ脱力して落胆しただけの四年前のワールドカップと違って、最後の最後のホイッスルが鳴るまで夢を見られたワールドカップだった。感謝。
追記: 今日の香川は今までの代表戦の中で一番よかったんじゃないだろうか。ゴールこそなかったものの。