冬の花火

2月1日、土曜日。

書かないはずだった日記を書いている。

生まれて初めて冬の花火を見た。彼女の車の中で、フロントガラスを通して。外は雨だった。雪はどこにもなかった。その1時間半前から、僕らは車内で別れ話をしていた。一緒に冬の花火を見るのは彼女の夢だった。僕は夢を叶えてあげたかった。

意外なことに、この花火を見たら離れる、と言い始めたのは彼女の方だった。そうしようと僕は言った。こうして僕らは遂に別れた。と思ったのだが……。

彼女が去り、帰宅して珈琲を淹れて飲んだ。煙草を吸った。気がつくと自分の表情が和らいでいた。つまりどこかにほっとした自分がいるのだった。ところがだんだん気が滅入って気持ち悪くなってきた。すると案の定彼女から激昂の電話が入った。電話はすぐ切れた。ここまでは想定内で、いわばワンセットだ。何をしたらいいのか分からず「東京ラブストーリー」の続きを見始めたらさらに気が滅入って途中で停めた。驚くべきことに、どこかで彼女からまた電話がかかってこないかなと思っている自分がいた。そして懇願の電話がかかってきた……。

結局これもまた案の定なのか、電話は延々と終わらず迷路に迷い込んだように当初とはまったく違う方向に、つまり七面倒な方向にうねうねと永遠に終わらないかのように続く。終いには僕は一言も言葉を発することができなくなった。彼女は拗ねて、最終的には開き直った。自分が何を言えば間違いになるのか、それすら分からなくなってしまった。僕らは今日別れたはず。なのになんでこんな永遠に終わらない電話になってしまっているのか。しばらくの間僕は黙っていたが、そろそろ2時間半が経とうとするころに風呂に入ると言った。それでようやく電話は終わった。風呂に入る前に体重計に乗ると、昨日よりも900g体重が減っていた。このペースで行くといつか自分の質量はゼロになってしまうのではないか。2カ月ちょっとぐらいで。

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今日は仙台から弟が来て母のところに面会に行った。母は熱が37度5分まで下がったということだったが、弟の話によるとときおり身体中が痛いと言うのだという。

気がつくと2月だ。母の熱はいつ下がり、母の痛みはいつ消えるのだろう。そして、僕は一体どうすればいいのだろう?

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