宙ぶらりんの男

10月26日、月曜日。

朝、アマゾンから枕カバーが届いた。昨日なんとなく注文したものだ。ほしい物リストに入れていたものが安くなっていたので。枕カバーだけ取り換えてもいいのだが、ホームセンターで買った安物の羽根枕が大分へたっているので、夕方ホームセンターに行って同じ安物の羽根枕を2つ買った。何故なら枕カバーが2枚あるからだ。ところがよく考えてみるともうこれからは一人で寝るだけなのだから、いくらへたっていると言っても一つのベッドに4つの枕はいらない、ということに気づいた。とりあえずひとつは枕カバーを付けてベッドに置いた。つまり都合3つ枕があるのが今の状態。なので枕と枕カバーが一組余っている。正直これをどうしたものか自分でも分からない。一応、予備の枕ということにしておくしかないか。

昨日の続きなのか今日も午前中は頭痛と眼精疲労。日中はトレードも、夕方まで散々ドローダウン(含み損)に耐えて保持していたポジションを利が乗った途端に利食いしてしまった。それで20ピップスほど取り損ねる。どうしてこうも我慢ができないのか自分でもよく分からない。今日のところはネックラインも明確だったのでストップの置き方も分かりやすかったのに。いずれにせよ、自分にもっとも足りないものは勇気だ。

午後ポジションを持っている合間に溜まったごみをごみ処理場に持って行った。

ごみ処理場は最上川の橋を越えたところにある。橋を渡るたびに思うのだが、実のところ自分は案外と美しい町に住んでいるのではないか。何の変哲もない山形の片田舎の町ではあるが、地平線の代わりに横たわる奥羽山脈が案外と綺麗だということ、大半を空が占める景色の中、橋を渡ると見えてくる町の姿に安堵するなど。

実に不思議なことに今日はここまで彼女からSMSが届いていない。もしかしたら僕の記憶違いで午前中に一通ぐらい届いていたのかもしれないが、少なくとも午後から夜にかけて着信もメールもないことは確かだ。これがなんか気持ち悪い。今までこういう反応はなかったので。一体何が彼女の中で起こっているのか。楽天的に考えればただ単に他の誰かに乗り換えたのかもしれないが、一日や二日でそう上手く物事が進むものなのだろうか。何が起きているのかと考えるだけで心が揺らぐ。つまり不安定になる。これまでの習いでいくと明日あたりが危ない。彼女がうちを訪れる確率が高い。もしそうなったときに、果たして自分はどう対応すべきなのか。毅然として警察を呼べるだろうか。正直言って警察を介在させるなどという面倒なことはできればやりたくない。しかしだからといってまた同じことを繰り返すようでは、延々と生涯同じことを繰り返すことになる。とりあえず今のところはブロックしたメールの中身を読まないようにしている。

いつも訪れる夕食後の抑うつ状態だが、ちょっとでもトレードをすれば気が紛れるということが分かった。ポジションを持てば否が応でも集中せざるを得ないから。同じ理屈で朝方の頭痛と眼精疲労も気がつくとなんとかなっている。とはいうものの、気を緩めると彼女をどうしたものかと考えてしまう。正確には彼女に対する対応を。果たして物語は無事終わったのかどうなのか。どうにも宙ぶらりんな気持ちだ。もちろんどうすべきなのかは分かっている。分かってはいるのだが……。

などとつらつら書き連ね、今スマホを見たところSMSが3件、やっぱり。まあ彼女にしてみればよく我慢できた方だとは思うが。

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