神経症的日記

午前中に長々とした日記を書いているうちに昼になってしまい、退去の立会いが1時だったので慌てて電車に乗り、前の部屋に向かう。着いてバタバタと掃き掃除をしていると、管理会社の人間が来てしまい、そこまでで掃除は諦めた。どうせ精一杯やったところで高が知れている。で、管理会社の人間が部屋を点検してなにやら書き留めているのを固唾を呑んで見ていたが、案の定、壁紙は全部張り替えということになり、2年住んだので半額とはいえ結構な金額、おまけにエアコンも黄ばんでいるということで洗浄費が発生しこれも案外な金額で、この2つだけでも予想外の出費、なにしろ今の僕は異常なまでの心配性、小心者だから、身体の力が抜けて足ががくがく震えてしまうのでは、と思ったほど落胆した。いい方に予想外だったのは、フローリングの1枚に煙草の焦げを作ってしまい、紙やすりで削ったものがかなり目立ったのだけれど、その部分は指摘されたものの何故か請求されなかった。本来これだけでも有難いと思わなければならないところなのだけれど、駅までの帰り道、頭の中は予想外に出費がかさんだことで一杯になり、例の引っ越しに対する後悔ともあいまって歩く力も抜けていた。予定ではそのまま郵便局と区役所に直行する予定だったがとてもその気力はなく、遊歩道のベンチに腰掛けて母親に電話をして、今回の引っ越し費用は親に用立ててもらうしかなかったため、ひとしきり謝り続けた。もうこのときの精神力はゼロではなく、マイナス、史上最弱クラスだったのだ。今考えてみると出掛けに安定剤を飲んでいくべきだったのだろうけど、午前中の日記に書いたように昨夜ロクに寝ていないので、眠気で何も出来なくなる可能性もあるのでそれも出来なかった。

電話を終えるとひとまずドトールで軽い昼食を取り、いろんな意味で休憩。それからまず郵便局で転居届けを出してから区役所に寄って、住民票や保険証の住所変更をした。区役所ではもしかしたら近々田舎に転居するかもしれないので、その場合に必要な手続きも聞いた。まだ脱力からは完全に脱しておらず、案の定ときどき思い出したように眠気はやってきたが、4時ごろに区役所での手続きを終えると明日やる予定だった運転免許の住所変更も一気にやってしまおうという気になり、タクシーで浦和の警察署に向かった。乗る前にこの日初めての安定剤を飲んだ。4時過ぎ。

免許の住所変更を終えるとさすがにまたタクシーに乗るのは気が引けるので、徒歩20分と聞いていた道のりを浦和の駅まで歩く。安定剤を飲んでしまったし、今の体力では自信はなかったのだが、いざ歩いてみるとそれほどの距離ではなかった。で、安定剤が効いてきたのかようやく少し気分的に落ち着きそうだったのでパルコのカフェで一休み。エスプレッソのダブルとカプチーノを飲んで、1時間半ぐらい考え事にぼんやりとふけったが、それだけ考えてもこの先のいい解決策、アイディアは見つからなかった。

帰宅して7時になると、セコムが来てセキュリティについてひとしきり説明を受けたが、いちいちアラームを止めるのは面倒なのでそんなことを設定するつもりはなく、それよりも居室に火災報知機と廊下にスプリンクラーがあることを聞いて大袈裟だが仰天、やれ煙草を吸っただけで火災報知機が反応するのかとか、コーヒーの豆を炒るとスプリンクラーが作動しないかとか取り越し苦労、心配性が全開、何度も根掘り葉掘り訊ねてようやくいままでそんな事例はないとのことだったが、またさらに窮屈になり居心地が悪くなったような気がするから困ったものである。

とまあ、ここまで読んだ人がどれだけいるか分からないけど、ここまでの日記の異様な詳細さを見ても分かるように、何度も書くようだけど今の僕は過敏、異常なまでの心配性、極度の神経質である。要するに何から何まで、あらゆることが心配なのだ。今の僕の状態に当てはまりそうなものをウィキペディアでなんとなく調べてみると、不安障害、強迫性障害、発作はないけどパニック障害、もうありとあらゆるものに当てはまるようにすら思えてくる。まあ、この辺は境界や定義そのものが曖昧であるから当たり前と言ってしまえば当たり前なんだけど。その証拠に薬物治療に使われる薬は全部同じで、抗うつ薬と抗不安剤(安定剤)の併用ということになっている。ということは、今の僕の薬の服用の仕方はまんざら的外れではないのだが、それにしては精神、心が脆弱過ぎる。まあ物凄く大雑把に言えば、昔でいうノイローゼとか不安神経症といったものに限りなく近い状態なのだと思う。なんかノイローゼと文字にしてみると心なしか抵抗を覚え、ううむ、という気はするが。だが実際問題として部屋に戻ってくると、例の車の通り過ぎる音がことさら大きく感じてしまったりするのだ。これから睡眠薬ではなく2錠目の安定剤を飲もうと思うが、さて今夜は首尾よく眠れるだろうか。まあ心身が復活するまで就職活動はしないことにしたので、やっぱり耳栓して寝るかな。別に昼まで寝ても構わないのだから。それにしても、今思い返しても以前NYのマンハッタン、ブロードウェイのホテルに泊まったときも、夜はひっきりなしにサイレンが聞こえてここと大差なかったような気がするのだが。あのときは別に気にならないで眠れた。とすれば、やはり精神状態によるところが大きいのだと思う。もはや慣れるしかない。

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