驚愕

12月18日、日曜日。

クラブW杯決勝、レアル・マドリード 4-2 鹿島アントラーズ。ただただ驚いた。この最終的なスコアからは想像もできないほど凄い試合だった。結果的にはC.ロナウドがハットトリックしてレアルが勝ったわけなんだけど、今日の試合は僕だけではなく世界中が驚いたはずだ。

サポーターというほどではないものの、ずっと鹿島を応援し続け試合を見続けている僕ですら、今日はとてもかなわないと思っていた。4-0でチンチンにされた代表のブラジル戦みたいな試合になるんじゃないかと思っていた。試合が始まってすぐにベンゼマに先制点を決められたときはああやっぱりとこの後の惨憺たる展開になるであろうゲームを想像した。ところが。

テレビで見ているこっちがこれほど緊張しているというのに、1-0とリードされた鹿島の選手は臆することなく普段通りのプレーをしている。いや、確かにどこか硬さはあったのだろう、いつもよりもパスが繋がらない印象を受けた。レアルのプレースピードに伍するためにパスの精度が落ちていた。しかし、前半の終了間際、土居のクロスを膝の内側でトラップした柴崎が利き足ではない左足でゴール右隅に同点ゴールを決める。柴崎はまったく喜ばないので、一瞬誰がゴールしたのか、それともゴールじゃないのかと思ったほど。とにかく、ボコられると思った試合を前半のうちに1-1と追いついてしまった。

さらに後半とんでもないことが待ち受けていた。相手ディフェンダーのクリアボールを拾った柴崎がDF4人に囲まれながら全部かわして、またもや利き足ではない左足でスーパーゴール。見ていてまさに呆気にとられた。レアル相手に1-2と勝ち越してしまった。たぶん、全世界で何千万だか何億だかという人が呆気にとられたんだと思う。鹿島がレアル相手に勝っている。まさに夢の中にいるような非現実感。一体何が起こっているのだろうという、本当に夢の中にいるような不思議な時間が過ぎる。ところがそれは案の定というか長続きせず、山本がペナルティエリア内で倒したということでPK、これをC.ロナウドが決めてスコアは2-2になった。

それにしても変だ、鹿島がレアル相手に互角に戦っているぞ、それも普通に。後半も鹿島は攻める。終了間際に遠藤がビッグチャンスを外す。試合は90分で決着がつかず、延長戦へと突入。90分までの試合は鹿島はまったくレアル相手に見劣りしない。勝ってもなんら不思議でもないという不思議な現実。まさしく90分間の夢を見た。

しかし延長戦に入ると連戦が続いた鹿島は目に見えて体力が落ち、隙をつかれてC.ロナウドに決められてしまう。これで万事休したかに思えたが、その直後に柴崎のフリーキックを途中出場の鈴木優磨がヘディングシュート、ところがこれがバーに弾かれる。これが決まっていたら……。しかしたらればでいえばPKもそうだし、セルヒオ・ラモスが金崎を倒したときに主審が2枚目のイエローカードに手をかけて出すのをやめた不可解な行動もそうだ。延長に入って、サッカーの神様はもう鹿島に微笑んではくれなかった。そして延長前半にまたロナウドに決められ4-2。これでロナウドはハットトリック。明らかに動きが落ちた鹿島はそれでも諦めずに延長後半も果敢に戦ったものの、試合はそのまま4-2で終了。長い夢は終わった。

しかし凄い試合だった。こんなに上手い西を見るのは初めてだし、この数試合の曽ヶ端のセーブは神がかっていたし、昌子は鬼神のようだった。そしてこの試合の柴崎はとんでもなく凄かった。4-2というスコア以上に、途方もなく凄い試合だった。後々まで語り継がれるであろう試合を僕らは目にしたのだ。柴崎が2点目を決めたときのジダンの呆気にとられた顔。センターサークルにボールを置くロナウドの重い表情。確かに鹿島はレアルを追い詰めたし、本気にさせたのだった。

試合が終わってからも、いつまで経っても興奮は覚めやらず、何かが大きく変わったという感じが否めない。なんていうか、大友克洋の「AKIRA」でアキラが覚醒したみたいな感じ。なんか凄いものを見たという感覚。

で、一夜にして柴崎は全世界のサッカーメディアの耳目を集める寵児となった。スペインのメディアも、イギリスのメディアも、柴崎岳とは一体何者なのかという特集を組み、移籍金がたったの2億5000万であることを書き立てる。今日の2ゴールで柴崎はブロンズボール賞。ゴールデンボールはハットトリックのロナウド、シルバーボールはモドリッチ。

とにかく世界中が鹿島の戦いぶりに仰天した。柴崎と昌子にはこの冬になんらかのオファーが来るんじゃないかと思う。実際問題として柴崎が出るのは痛いけれど、彼のためにはもう海外でプレーした方がいいと思う。日本代表は今日の鹿島に大迫と内田を足せばそれでいいんじゃないかと試合中に誰かがツイートしていたけれど、それぐらい今大会の、今日の鹿島は強かった。

いやホントに、いまだに夢の中にいるみたいなんだ。

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