抜歯

8月24日、木曜日。

また暑さが戻ってきたせいだと思うんだけど、朝9時過ぎに目が覚めたら布団も浴衣もはだけてほぼ全裸になっていた。あ、これはやばい、少なくとも浴衣は戻さなければと思ったのだけれどその前に何度かワープを繰り返して結局ほぼ全裸のまま10時9分に起きた。もちろん、なんで全裸になるかというと浴衣で寝ているからなのだが、習慣になってしまったというか、慣れてしまうと浴衣の方が楽(な気がする)なのでなかなかやめられない。その、全裸ショックがあったせいで夢の内容も忘れてしまったんだけれど、朝食後に書斎の冷房を入れて相場の想定をしているとまた眠くなってしまい、昼をまたいで1時間半ぐらい昼寝してしまった。なので、昼寝から目が覚めると1時半近く、こうなると相場もなかなか動かなくなるし今日は3時にサッカー日本代表のメンバー発表があるのでポジションは取らない。

その3時の代表メンバーの発表なのだが、間が悪いことに3時半に歯医者の予約が入っている。でまたハリルホジッチの話が長い。なのでぎりぎり3時25分に出ればなんとか歯医者に間に合うけれど……と思って見ていたのだがやっぱりフォワードのところで時間が来てしまった。しかしながらセンターバックで昌子と植田、ミッドフィルダーで柴崎の名前が出たのでひとまず安心。あとで歯医者から戻ってから確認すると、負傷中の大迫は呼ばれて、金崎ではなく杉本健勇が選ばれていた。柴崎が久しぶりに選ばれて一度は安心したものの、今回は23人の枠に対して27人を選んでいるので、最終的には4人脱落するわけだからまだ安心はできない。

で、歯医者なのだが、今日のところはてっきり取れた差し歯をつけ直すだけだと思っていた。抜けたのは右上の一番手前の奥歯なのだが、無情にも歯根が割れて取れたので歯根を抜きます、と言われてしまった。というわけで久々の抜歯、実に嫌なものである。何しろ子供じゃないんだから一度抜いた歯は二度と戻って来ない。がつんがつんと麻酔の注射を打たれる。それでも痛い。こんなことが好きな人がいるわけがなく、もし歯を抜かれるのが好きという人がいるのであればそれはプロフェッショナルなレベルの変態である。散々麻酔を打たれた挙句ぐりぐりと歯根を抜かれるのだが、なかなか簡単に抜けない。女医はもし痛かったら手を挙げてくださいというのだけれど、これはほとんど意味がない。手を挙げたら抜くのを止めるというわけではなく、さらにがんがんに麻酔の注射を打たれるだけだからである。というわけでようやっと抜き終わり、医者が血まみれの抜いたばかりの歯根を見せて、「いりますか?」と訊くので、一瞬どうしようかなと考えたものの「いりません」と答えた。なんで一瞬迷ったかというと、なんていうか、珍しいものをもらえるみたいな感覚がちょっとあるからで、すぐに考え直したのは歯根なんかにセンチメンタリズムは存在しないと思ったからである。

というわけで久しぶりに歯を抜いたので口の中が血の匂いがぷんぷんするし、帰宅後にその麻酔が徐々に抜けていく感じ、それとともに鈍痛がしてくる感じが実に嫌で、ちょっとした具合の悪い人みたいになってくる。あんまり嫌なので母のところに行くまでの30分ぐらい横になって寝ようとアラームをかけてベッドに寝転がってうとうとした。6時15分にアラームは容赦なく鳴り、嫌々ながら起きて煙草を一服して母のところに向かったのだが、なんかふらふらで実に具合が悪い。そんなわけなので母のところからも早めに帰ったのだが、麻酔が切れて痛みが出てきたのでもらった痛み止めを飲む。なんか食欲も全然ないのだが昨日肉を買ってしまったので賞味期限的にも食べないわけにはいかない。ああ俺は今弱っている、山形弁でいうところのガオっている、と思いながらなんとか夕飯を作り食べ終わると、不思議なことに気がついた。台所のノートPCでツイッターのタイムラインを見ていたのだが、食べる前よりも食べ終わった後の方がくっきりと見えるのである。なんでそんなことに気づいたのかというと、字が小さくなって見えたから。もう10年以上前にSSRIとベンゾジアゼピンの薬漬けになっていたころ、感覚過敏になって夜散歩していたら突然映画のパンフォーカスみたいに物凄くくっきりと(気味が悪いくらいに)世界が見えた経験はあるのだが、今回はどっちかというと感覚過敏というよりはメシを食う前が栄養が足りなかったんじゃないかとそんな感じに思えた。

まあ今日はとにかく歯を抜いて以降はなんと言ったらいいか、その、歯を抜いた人になってしまい、したがって相場のチャートも一応見ていたものの、様子見でちびちびとやるしかなくそのうち今日のところは諦めた。これを書いている今も歯を抜いたところはちょっとしょっぱい血の味がする。敢えて今日の教訓というものがあるとすればひとつしかなく、

歯は抜くもんじゃない

ということである。

明日は消毒をするというのでまた歯医者に行かねばならぬ。嗚呼。

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