逃避行

3月21日、水曜日。

長い夢を見た。夢の中で、僕は女と二人でなんらかの法を犯し、逃避行をしていた。一体何の罪なのかは定かではないが、どうやら殺人とかそういう気が滅入る深刻な犯罪ではなさそうだった。指名手配されているので次々に潜伏先を変えながら逃げる。例によって女には名前も顔もないが、たぶん昔付き合っていた(当時)人妻のジュンコだと思う。最後に足がついて官憲に追い詰められ、もはやこれまでとなるのでハッピーエンドではないのだが、なんだかやけに面白い夢だったように思えるのは逮捕後の話がなかったせいだろうか。なんていうか、二人で逃げるというのはなんか楽しかった。実話を基にしたテレンス・マリック監督「地獄の逃避行(Badlands)」の二人も、最後には捕まるがそれまで無軌道に逃げている間は楽しかったんじゃないだろうか。もっとも、彼らは人を殺しながら逃げるのだけれど。なんにせよ、逃避行というのは一種の現実逃避的な匂いがつきまとう。例えそれが必ずどこかで帳尻が合ってしまうものだとしても、その帳尻が合うまでの間はなんだかうつつらしからぬ一種の楽しさがあるのだった。何故逃げることが楽しいのか。もしかしたら逃げ続けることが楽しいのかもしれない。逃げることそのものよりも、逃げ続けているという感覚がどこか現実と乖離しているような。つまり夢のような。それは必ず終わりがあるからなのか。だとするとまるで人生そのものじゃないか……。

そんな夢を見たせいか、いつまでも寝ていたくて11時12分起床。寒い一日だった。起きて台所で朝食を摂りながらツイッターのタイムラインを追うと、全国のあちこちで雪が降って積もっているという。僕の住む町は予報では夕方以降雪ということになっていたが、結局雪は降らず夜になって雨が降った。

彼岸の中日なので昼過ぎに墓参りに行った。

父には申し訳ないけれど、花は持たないで線香だけあげてきた。寒い日だからなのか、僕以外に墓参に訪れている人は誰もいなかった。なんだか自分だけが見当外れなことをしているような気がしないでもない。ひっそりとした本堂の位牌堂にも線香をあげた。

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