雪隠詰め

6月13日、土曜日。

朝目が覚めてみるともう10時近かった。今週はずっと(自分にしては)早起きしていたのでちょっとびっくりした。しかし、昨夜寝たのは2時半ごろだから睡眠時間としては7時間半弱、そうたまげるほどではない。

朝食後、女子W杯のなでしこ対カメルーンの試合を見る。早々に2点リードしたのには驚いたが、ゲームが進むに連れて「いつもの」なでしこの試合になっていった。男子代表のサッカーを見たばかりなので判断もパススピードもあまりにも遅く正確性を欠いていてミスを連発するので、見ていていらいらしてストレスが溜まる。後半になるとまったくカメルーンのペース。もちろん日本を応援したいのは山々なんだけど、どうにも応援したくなるようなサッカーをしてくれない。後半途中から昼食を作り始める。食べながら見ていると案の定1点返され、終了間際には追いつかれて逆転されてもちっともおかしくない展開に。そのまま2-1で試合は終わり、無事決勝トーナメントに進むことはできたものの、なんかすっきりしない。いくら女子だからといっても、前回優勝して今回も優勝を狙う云々という内容ではないのだ。勝ち負け以前にもっといい内容のサッカーをして欲しいと切実に思う。

この後半途中から、正確に言えば昼食を終えて煙草を一服してからやたらと便意を覚えてひっきりになしにトイレに篭る。とにかく何回行ってもすぐにまたトイレに篭らなければならず、さながらうんこ地獄である。そのうち水のようになり、完全に下痢状態になった。先日内科に行って出された下痢止めを飲む。処方されたはいいが飲むつもりも予定もない薬だったのだが、妙なところで出番が来たというわけだ。

とにかく間断なくトイレに延々と通う羽目になり、すっかり疲れて衰弱してしまった。もうへろへろである。ようやくひと段落ついたようで、書斎のソファに寝転がって本を読んでいると、そのうち自分が本を持ってないのに読んでいることに気づいた。本を読んでいるのではなく、頭の中に浮かんだ言葉を読んでいるだけだったのだ。このようにして、1時間ばかりあっちの世界とこっちの世界を行き来した。本当に僕は衰弱しきっていた。

そんな風に、次第に僕はふらふらになっていく。体力もないし、これでは病弱そのものだ。そうこうしているうちに、中村文則「掏摸(スリ)」読了。この、各国に訳されていて海外で非常に人気があり評判が高いという中村の作品、あまりにも非情というか無慈悲で後味が悪かった。誰一人死ぬことのない黒川博行のハードボイルドを読んだばかりなので、余計陰惨な話に思えるし希望がない。人がいとも簡単に殺されるというのもそうだが、登場人物のほとんどが感情移入したくなるような人物ではないということも後味の悪さに繋がっているようだ。唯一感情移入したくなるのは主人公だが、それもスリとなるとどうにも微妙だ。悪役があまりにも非情で救いがないしユーモアの入り込む隙がない。重いというよりも乾き切っている。イギリスのドラマ「Utopia」を見ても思ったが、人が虫けらのように無残に殺されるのをどうして人々は楽しめるのだろうか。それが無慈悲であればあるほどエンターテインメントとして成立するというのは。それは人間の本質的に持つ暴力性とか残虐性なのだろうか。

考えてみると、以前小説を書いているとき、僕自身も小説中の死というものは無残であればあるほど効果的だと思って書いていたのを思い出す。僕にもそういう時期があった。そういう意味では、中村文則は読者が興味を持つツボというかベクトルというものを心得ているのだ。ただそれが救済とは逆の、むしろ不快な方向であるというだけで。そういう点ではどこか村上龍を想起させるものがある。中村が海外で人気があるというのは、ジェイムズ・エルロイとかと同列のところにあるのだろうか。しかし、同じように非情で陰惨で無慈悲で救いがない話でありながら、エルロイは読んでいてどこか爽快感がある。

で、昔見たアンジェイ・ワイダ監督の「灰とダイヤモンド」という映画を思い出した。筋はほとんど覚えていないのだが。救いのない映画というのも数多い。つまり、救いのない話の需要というものは確かにある。そんなわけで後味はよろしくないのだが、もうちょっと読んでみたい気にはなる、中村文則。

今日は暑かったが台所の窓を開けているとときおり涼しげな風は吹いてきた。むしろ夜になってからの方が暑いような気がする。母のところに行ってからスパゲッティの夕飯。夕食後、たぶん何十年ぶりだと思うが、久しぶりにジョージ・ミラー監督「マッドマックス」(1979)をhuluで見た。続編が公開されるというので思い出したのだが、こうして改めて見てみるといかにも低予算のB級映画、あまりにも安直な駄作のように思える。正直、どうしてこれがヒットしたのか首を傾げる。近未来のバイオレンス映画という設定が当時新鮮だったのだろうか。それにしてもお粗末。自主制作映画っぽい。

下痢止めを飲んで、夕方以降はどうやら下痢は治まったようだ。その後はトイレに足繁く通わずに済んだ。

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