天国の日々

8月9日、日曜日。

東アジアカップ、中国と1-1で引き分け、とうとう勝ち星を挙げられずに日本は最下位に沈んだ。今日の試合も前半はパススピードも精度もなく、恐る恐るパスを回しているようで、かつての日本代表の小気味いいパス回しは見られなかった。したがって同点に追いついたシーン以外は攻撃もろくに組み立てられず。ようやく攻められるようになった後半は土砂降りの雨。今日もゴールを挙げた武藤(雄樹)や遠藤航などそれなりに収穫はあった。だがフォワード陣のポジショニングが悪く、特に川又と永井という名古屋の二人はまったく機能せず、人選自体が間違いだったのではと思える。一番がっかりさせられたのは宇佐美。柴崎にしても試合の流れを変えることは出来なかった。結局のところ、こうしてみると海外組と国内組の力量差はまだまだかなりあると痛感させられた。それにしても最下位とは。それもアジアではなくて東アジアで。武藤が2得点で大会得点王というのにはびっくり。まあそれだけの大会であったとは言えるのだが。

朝8時半ごろにドアチャイムの音で起こされた。階下に降りてみると回覧板だった。それにしても6時間半ぐらいは寝ているのだが、どういうわけか午前中ソファで2時間気絶してしまった。やたらと眠かったのである。

レンタルで注文していたCD(アニタ・ベイカー「Compositions」)とDVD(「るろうに剣心 京都大火編」「るろうに剣心 伝説の最期編」「天国の日々」)が届いたのでせっせとリッピングして焼いた。昨日デスクトップのOSをWindows10にアップグレートしてしまったのでちゃんとリッピング出来るかどうか心配だったが、無事リッピングソフトが動作してほっとする。DVDのラベルを印刷したら上手くいかず、先日の雷雨でびしょ濡れになってとうとうプリンタがいかれたかと思ったが、インクを交換したら無事解決。

夕方近く、髪を切ろうと1000円カットに行ってみたらいまだに人員不足で臨時休業の札、どうやらしばらく営業再開しそうもない雰囲気。その足で本屋に寄って芥川賞の2作が全文掲載されている文藝春秋を買おうと思ったら売り切れ。こんな山形の片田舎でもそうなのかと唖然。そのままスーパーの敷地内の美容院(カットが2300円)に行ってみたが混んでいて諦め、スーパーで買い物をして帰る。

夕食後母のところに。母があまりに言葉が少ないので、返事もしてくれないのではしんどいと思わず僕がこぼしてしまったら、その後母は自分から話そうと努力をしているようだった。なんだかむしろ気を使わせて可哀想な気がした。どうにも僕は辛抱というか我慢が足りないのだと反省した。

夜はリッピングしたテレンス・マリック監督「天国の日々」を見た。大好きな映画であるのに、むしろ大好きであるがゆえにこの映画を見るのは20年振りか、もしかしたら30年振りぐらいである。あまりにも思い入れがあるのでLDで買おうとずっと思ってそのままになっていたのだ。そうこうしているうちにもうLDというメディアもLDプレーヤーもなくなってしまった。

「天国の日々」を見るとナカタユウコを思い出す。確か仏文の後輩であった彼女が目をきらきらさせて熱心に勧めたせいでこの映画を僕は初めて見たのだった。とにかく驚くほど美しい撮影の映画だ。冒頭から少女の独白が被ることも含めて、この映画が一番好きなのだとナカタユウコは言った。彼女を僕に紹介したのは同級生のミヤザキだった。それでまだ20代前半だった僕らは付き合い始め、目黒のオールナイトの映画(「去年マリエンバートで」)を見に行ったりした。彼女はレミと同じレーザーディスクに勤めていた。そのころの僕はまだオリコンにいたはずだ。僕は阿佐ヶ谷の彼女のアパートにも行ったりしたのだが、とうとうキスのひとつもしないままで終わってしまった。僕は確かに彼女に恋していたわけではなかったのだが、それにしてもどうして付き合うのが嫌になったのか、いまだによく分からない。彼女から電話がかかってきて「吉祥寺でお好み焼きが食べたい」と言われ、僕は「嫌だ」と言った。そうしたら彼女は「ごめんなさい」と言って泣き出した。それが最後に交わした会話だったと思う。そんな風に僕らは終わってしまった。ただそれだけの、付き合ったうちにも入らないほどの付き合いだったのだけれど、いまだに「天国の日々」を見ると彼女を思い出す。そして、いかにも未熟でわがままで若かった自分自身を思い出すのだった。オールナイトの映画を見た帰り、信号待ちの間に小柄な彼女の頭に顎を乗っけたことを思い出す。僕が出来たのはせいぜいがそこまでだった。あのもどかしいころも僕自身の「天国の日々」だったのだろうか。

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