12月11日、日曜日。
一夜明けて10時半近くに目覚めると、世界は雪に埋もれていた。まるで違うレイヤーになったかのように。雪はまるで誰かが躍起になっているようにこれでもかと降っていた。朝食後に今冬初めての雪かきをする。その時点ではまだ10cmぐらいで、初級クラス。たいしたことはない。雪かきも12・3分で終わる。しかし雪の降り方があまりにも凄いので、振り返るともう積もっている。ああこれじゃ午後にまた雪かきだなと思う。
とにかく雪はひっきりなしに降っていて止むことがない。今日は2時に近所の幼馴染みの葬式に出なければならない。香典を用意し、二階から着替えを持ってきて久々にワイシャツを着て黒いネクタイを締める。髭を剃る。喪服は父のお下がりで、久しぶりに着てみるとちょっときつくなっている。ということは若干太りつつあるということか。油断大敵。だがかかりつけの精神科医にはやれ痩せ過ぎだの栄養のバランスがどうのと言われている。
いつもそうなのだが、葬儀にはぎりぎりの時間で滑り込む。待つのが嫌いだから。幼馴染みは僕よりも2つ年上なだけだが、孫がいた。別に不思議でもないのか。海外法人の副社長をやっていたということなので、この近所では出世頭ではないだろうか。それでも葬儀は思いの外あっさりと終わった。弔辞を読む人が区長と社長の2人だけだったので助かった。しかし改めて葬式というのは不思議な儀式のように思えた。坊主がときおり鉦を鳴らしながら読経するのはどこか滑稽にすら思える。父の葬儀のときは喪主挨拶で涙声になって声を詰まらせるという醜態を晒したというのに、どうして人の葬式だと冷淡になるのだろうと自分でも不思議に思う。帰り道は吹雪だった。
帰宅後、本日2回目の雪かき。ふと見上げると屋根にはもう20cmぐらい積もっている。相変わらず雪は小降りになるどころかますます吹雪いて、これは母のところに行くのは厳しいかなと思ったのだが、少しだけ顔を出そうと車を出す。特養の駐車場は除雪していなかった。母に今日の葬儀のこととかを話す。改めて気づいたのだが、確かに最近の母の記憶力はかなり怪しいのだが、まったくもって母はまともで正常だと思った。少なくとも認知症とは思えない。30分ちょっとで帰る。帰り道はやっぱり凄い吹雪。
夜はクラブW杯の準々決勝、鹿島対マメロディ・サンダウンズ(南アフリカ)。正直相手がアフリカ王者なので厳しいかなと思っていた。案の定前半は一方的に攻められ、ちょっとこねると全部ボールを取られ、シュートを11本浴びた挙句に鹿島のシュートはゼロ、いわゆるチンチンにされたという感じだった。これはまったく歯が立たないなと思っていたのだが、不思議なことに後半になると形勢が逆転する。人は鹿島の修正力が凄いというが、一体何をどうしたというのだろう、前半と同じメンバーなのに違うチームになったように攻め、守る鹿島。で、金崎を交代で投入して2分後には先制点を挙げていた。遠藤のゴール。この虎の子の1点を鹿島って守れという感じだが鈴木優磨も投入してさらに鹿島は攻める。いつの間にかサンダウンズはすっかり守勢に立たされている。とうとう金崎が2点目を決める。というわけで、勝っちゃった。前半を見る限りではこの展開は想像もつかなかったが、それは相手のサンダウンズもそうだろう。なんだか前半と後半でまるで別のチームのようだった。双方ともに。
こうしている間にもしんしんと雪は積もっているのだろうか。どうせ明日の朝はまた雪かきだ。除雪車は出るだろうか。毎年この季節に雪で風景が一変するたびに、フレディ・ムーラー監督のスイス映画、「山の焚火」を思い出す。ラストで姉弟の暮らす山小屋は雪に埋もれていく。もう一度見たいのだがレンタルにもないしDVDはプレミアがついていて高い。いずれにせよ、こうして雪に埋もれた光景が当たり前になっていくのだろう。前回の冬みたいに雪が少ないなんてことは滅多にないのだ。