少なくとも不思議に思えることはある

3月25日、土曜日。

9時2分に目が覚めたのは、ちょうど今寝ている書斎の外の角辺りで、何かがりがりあるいはがちゃがちゃというような音が聞こえたから。電気のメーターがある辺りなので、電気の検針でもしているのかなと思った。なので二度寝をしようと思ったのだがいつまで経ってもその音が止まないので気になってきた。その、音が聞こえてくる角の辺りにはタヌキかなんかの糞があるので、もしかしたらそのタヌキ、あるいは先日見かけた猫かもしれない。とにかく何かが外でごそごそとやっているのだ。結局気になって9時8分に起きてしまった。どうやら外の音は止んだようだが、寝間着姿で外に出てみるのはためらわれた。電気の検針の人と鉢合わせするのも気まずい。そんなわけで、土曜日だというのに今週で一番早く起きてしまった。いや、しまったというほどではないのだけれど。

朝食後、電気の検針であれば郵便受けに検針票が入っているはずなので見に行くとない。ということはやっぱりタヌキか猫なのだろうか。着替えてから玄関の鍵を開けて外を見てみる。すると何も変わったところはなかった。古い糞はそのまま。壁に立てかけてある大きな脚立も、そのすぐ上の暖房の排気口も何も変わったところはなかった。とすると、あの音は一体なんだったんだろう?

京極夏彦の書く小説で京極堂は「世の中には不思議なものなどないのだよ」と言い放つが、実際には不思議なことはある。少なくとも不思議に思えることはある。

ともあれ、早く起きてしまったのだが何をするということも思いつかない。今週はAマッチデーなのでJ1の試合もないし夜にブンデスリーガの試合もない。一応午後にJ2の試合はあるがいまひとつ乗り切れない。とにかく何をしたらいいのかさっぱりわからないのだった。いずれにせよ、昨夜寝たのが4時なので眠い。

結局、11時過ぎにベッドに潜り込んで昼寝をすることにした。ゲームをしている夢を見た。VRのような体験型のゲーム。宇宙空間で宇宙船に乗って敵の攻撃をかわす、というような。そのうち、青空の広がった海の上に出たので、ひとまず休憩というかなんらかのステージを終了したのだなと思った。上の方をクリックするとコマンドが出る。というようなところで目が覚め、時計を見ると2時だった。なんと2時間半も寝てしまった。唖然。いくら寝不足ですることが思いつかないからといって、これではあんまりだ。ひとまず冷凍のご飯をレンジで温めて昼食を済ませると、昼寝していた2時間半の間のツイッターのタイムラインをさかのぼる。1時間ぐらいかかった。すると、なんと今野が骨折で代表を離脱。とこれでびっくりしていたら大迫も離脱。で、遠藤航と小林悠が追加招集だと。夕方には高萩も離脱。骨折の今野は気の毒だが一番気になるのは大迫。正直言ってタイ戦などもうどうでもよくて、大迫の怪我の方が心配。一応打撲ということで詳細はわからないが、軽症でブンデスリーガの再開に間に合えばいいのだが……。

というようなことをしていると3時を過ぎ、何をするにも中途半端な時間になる。それでJ2の湘南対千葉の試合を途中から見た。結果は2-0で湘南の勝ちだが、試合が終わるころにはもう夕方近くなっている。何もしていないのにもう夕方。一体全体、何をしたらいいのだろう? いつも寝る前に寝床でばかり読んでいる本でも読めばいいのだろうか。それともリッピングしてある映画でも見るべきか。何をするにも中途半端な気がするのは、何かをするというモチベーション自体が全然ないからだ。何もできる気がしない。かといって何もしないというのは本当に気持ち悪い。というような、ある種の抑うつ状態のような葛藤。しかし、時間はそんなことにはお構いなしに過ぎていき、やがて外は日が落ちて暗くなる。いつものように6時半過ぎに母のところに行って、まず浮腫んだ左足をマッサージする。15分ぐらいマッサージをすると息が上がって何故か腰に来る。8時前に帰宅。簡単な夕食。夜、やっぱり何もすることが思いつかない。何をしたらいいのかさっぱり分からない。しかも夕食後ということで眠い。なんていうか、これではまるで寝るために生きているようなものだ。

何もしていないのに何故か疲れている。背中や腰が痛い。何もしていないのに何故身体だけ消耗するのか。今日という一日をただ無為に消費してしまっているのではないかという嫌な感じがある。何もすることが思いつかないのでYouTubeで何か見ようとする。86年の秋元薫のアルバム「Cologne」を聴いてみる。アレンジは武部。そういえば武部の会社のあいつはなんていったっけ? 苗字が「す」から始まるのだがその後が出て来ない。武部の会社に所属しているヨウタロウに訊いてみようと電話してみる。出ない。留守電。武部の会社をググってみるとすぐに分かった。須永だ。今は社長になってる。ついでに昔の知り合いを少しネットで調べてみる。松任谷がやってる学校、マイカのHPを見てみる。講師の名前を見ていると、ほとんどはよく知っている連中だが、ひとり名前に聞き覚えがあるのにプロフィールを見てもわからない人間がいる。なんだか気になる。マイカに出向しているユカリに電話してみる。出ない。留守電。マイカの受講料を調べると腰が抜けるほど高い。先日一人教えることになったのだが授業料を安く設定し過ぎたかなと思う。そういえばヤマザキも誰かに教えていると言っていたので、彼はいくらぐらい取っているのだろう? 電話してみる。出ない。留守電。今日は誰も電話に出ない日なのだろうか。それとも土曜日の夜に電話をする方がおかしいのか。もはや既に、電話をする時代ではないのだろうか? 電話という方法自体が時代遅れなのか。つまり、俺が時代遅れなのか?

という風に、なんだかよく分からないままに一日が過ぎていった。深夜過ぎに競馬のドバイワールドカップをグリーンチャンネルで無料中継しているというので見た。眠かった。ドバイターフで「大魔神」佐々木の所有馬が勝った。つまり日本馬が勝った。しかしその後のドバイシーマクラシック、ドバイワールドカップでは日本馬はまるでいいところなし。眠い。

これだけ何もしていないのに、なんでもう2時半を過ぎているのだろう? そして、これだけ何もしていない一日なのになんでこんなに長い日記になってしまったのか。

やっぱり不思議なことはあるのだ。

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