Crash On Crash

土曜日。

数日来違和感を覚えてはいたものの昨夜ようやっと気づいたのだが、上の差し歯がひとつぐらぐらしていて放っておくと取れそう。なので今日の午前中に歯医者に電話したら火曜日の予約になったのだが、どうもそこまで持ちそうになくて気になる。

3時半就寝の9時半起床。昼を挟んで2時間ほど業務。2時からテレビでJリーグの鹿島×川崎を観戦。コタツで見ていたらどうも夕方近くなるとオートマチックに眠くなる。また5時ごろまで気絶。とにかく猛烈な眠気が襲ってきてどこか具合が悪いんじゃないかというぐらい。このところ、夕方コタツで昼寝する癖がすっかりついてしまっている。

スパゲッティの夕飯を済ませてから母のところへ。母は昨日からしている入れ歯が合わないらしく、痛くて外しているというような話を介護士としていたら、昨日はお前いたっけ? みたいなことを僕に向かって言い始め、どうやらこれは認知症の初期症状なのかそれとも以前手術後に担当医が言っていたように認知機能障害なのか。かと思うと、僕が米沢の上杉家についてちょっと口にすると、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も。成らぬは人のなさぬなりけり」という上杉鷹山の言葉を淀みなくすらすらと言ったりする。

帰宅後、夜はhuluで3日間かけてようやっとアンソニー・ミンゲラ監督「イングリッシュ・ペイシェント」を見終わる。マイケル・オンダーチェの原作(「イギリス人の患者」)は評判になったので読んだもののピンと来なかったが、映画の方はアカデミー賞の作品賞を取ったというので見たのだがとにかくやたらと長いしひたすら退屈な映画だった。超つまらなかった。予定調和的なセンチメンタリズムのメロドラマ。意外なところがどこもないし、主人公にもまったく魅力がないので感情移入が出来ない。オンダーチェの原作も詩人らしく散文詩的なただひたすら情緒に流されるだけの印象だったが、こんなんでアカデミー賞の作品賞なのか。

それで、たまたまその下の方にサムネイルがあった、同じくアカデミー賞作品賞を取ったポール・ハギス監督「クラッシュ」を見始めた(バラードの原作によるクローネンバーグ監督の同名映画とは異なる)。これがとてつもなく面白くて一気に最後まで見てしまった。文句なしに面白い。たぶん今年見た映画の中で一番面白かった。衝撃を覚えるほど巧妙かつ綿密に構成された群像劇。差別、人種問題、多民族国家、犯罪、怒りなどの理不尽なものをただ理不尽なままで終わらせないポール・ハギスの脚本の力量は驚嘆すべき。数多い登場人物もすべて魅力的。これまで知らなかったなんて。とにかく衝撃を受ける。久々に創作意欲を喚起させられる体験。同じ群像劇であるポール・トーマス・アンダーソン監督「マグノリア」はとにかく鮮烈で新鮮な印象(特ににラスト)だったが、「クラッシュ」の方がもしかしたら脚本の完成度、無駄のなさ、洗練度は高いかもしれない。これは同じポール・ハギス脚本の「ミリオンダラー・ベイビー」も見なきゃなと思った。

と、映画に感嘆している間に長野県で震度6の地震があった模様。まったく、日本という国はどこにいても油断がならない。

ところで、昨日はすっかりその理屈っぽさ、薀蓄にうんざりしていた菊地成孔「スペインの宇宙食」だが、一番理屈っぽい部分を通り過ぎたらまた面白くなってきた。要するにこいつはディレッタントなのだなと。

それにしても差し歯が気になってしょうがない。なんとか歯医者まで持ってくれればいいのだが。


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