紙の月

3月12日、土曜日。

何事かをひたすら繰り返す夢を見て、起きたら10時過ぎだった。先日のジョージ・マーティン死去に続いて、今朝はキース・エマーソン自殺の報が入ってきた。毎日何かしら訃報がある。人生とはすべからくそういうものだ。

午後はJ1の仙台対鹿島の試合を見る。もちろん応援しているのは鹿島なので1-0で負けてしまったのは残念なんだけれど、今日の試合に限っては仙台の集中力が凄かった。なんていうか、魂がこもっていた。

それから久しぶりに歯医者。椅子に座って、右上の差し歯がぐらぐらして取れそうなんですけど、と説明した途端に女医が歯を触って「取れました」と。仮付けしてもらったが、型を取って結局新しく差し歯を作ることに。

そんなわけで角田光代「紙の月」読了。

もう無茶苦茶面白かった。興奮した。一人の女がただ若い男と出会ったからというわけでもなく、派手な暮らしがしたい、金が欲しいというわけでもなく、気がつくと巨額を横領するまでに堕ちていく。そこには迷いがなく、まるで宿命のように堕ちていく。そのさまがあまりにも突き抜けていて爽快感すら覚える。彼女が迷うのはもう行き着く先がなくなってからである。人はどのようにして運命に絡めとられていくのかをものの見事に描いて痛快ですらある。ツイートにも書いたけれど、たがの外れた女性の買い物の仕方ってあまりにも凄いのでびっくりする。それでいてリアリティがある。あり過ぎるくらいある。

昔々、僕が30代のころに付き合っていた人妻のジュンコ(要するに不倫していたわけだが)にはそのころ小さい子供がいて、彼女が言うには子供の食事代に月に何十万とかかるというのである。20万だったか40万だったか。とにかく当時の僕にはそれが本当のこととは思えなかった。そんなことをふと思い出す。

ともあれ、たった二冊読んだだけで今の僕は角田光代の中毒である。マイブームだ。「紙の月」を読み終わりそうになった頃合でもっともっと読みたくてしょうがなくなり、歯医者の帰りに図書館に寄ったのだけれど今日は土曜日で5時で閉館になっていた。帰宅後の夜に読み終わって、いても立ってもたまらず、この田舎町に一軒だけの本屋が確か夜まで開いていると思って車で行った。本屋は10時までだった。迷った挙句、図書館にあることを知っていながら「対岸の彼女」を買った。明日まで待てなかった。それぐらい角田光代にハマっている。

本屋から帰ってふとアマゾンのプライムビデオで検索すると成島出監督の「八日目の蝉」があったので、こんな時間になるまで一気に見てしまった。事前にウィキペディアで調べて原作と異なる部分があるというのでいささか心配だったが、原作と遜色ない見事な映画だった。誘拐犯を演じる永作博美が素晴らしかった。ぐっと来た。

そんな調子でホントに角田光代がマイブームなのだった。今日のところはいささか興奮している。昨日までの具合の悪さを考えると、これはそれほど悪い傾向ではないだろう。

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