Mix

4月30日、土曜日。

9時45分起床。起きる時間がある意味安定してきたと言えなくもない。あまり有難くないが。それはともかく、朝起きたときから頭ががんがんに痛かった。朝食後頭痛薬のアドヴィルを飲むもしばらく頭痛は治まらず。風邪でもひいたのかと思った。昼前から業務。と、今気づいたのだが終了時間をメモするのを忘れた。たぶん2時過ぎぐらい。帰宅後またアドヴィルを飲む。最近の業務は貯玉で制限なく打てるようになったので一銭も銭を使っていない。それにもう長いこと煙草一つ交換していないので、どれぐらい貯め込んでいるのか自分でもさっぱり把握してない。

午後、椎名林檎のデビューアルバム「無罪モラトリアム」が届いたので早速聴いてみる。するとこれがあまりにも音が悪いので唖然とする。ミックスが酷過ぎる。とにかくボーカルが大き過ぎるし(ほとんど歪みそう)リズム隊の分離も悪く音がダンゴになってる。ボーカルはただでさえオンでデッド(残響がない)になっているのに半端なく大きいものだから、全体が台無しになっている。

料理でもいくらいい材料を揃えても加減を間違えて調理で失敗すると酷い代物になる、つまり最終的な味が悪ければどうにもならないように、音楽でも最終的なバランス、ミックスが悪いと聴けない代物になる。簡単な例を挙げれば、どんなにいい曲であってもチューニングの合わないAMラジオで聴くと聴けたものじゃないように。逆に言えば音さえよければ、どんな音楽でもそこそこ聴けるものになる。

僕はかつてミックスのディレクションだけは自信があった。たとえそれがスタジオ一日ロックで10万、エンジニア一日ロックで5万でミニアルバム全曲を一日で落とさなければならない(ミックスは日本ではトラックダウンと呼ばれてそこから「落とす」と言われる)インディーズの仕事であっても手を抜かなかった。音楽出版社で打ち合わせをしていて、自分が録った曲だけあまりにも音がいいのでびっくりしたこともある。

ボーカルが大き過ぎて酷いミックスになるというのは、かつてのアイドルではよくあった。昔、コロムビアのアイドルのオケをレコーディングして、最終的なミックスがあまりにも酷かったので担当ディレクターに苦情を言ったことがある。かつてのコロムビアは自社スタジオで録って自社エンジニアで落とすということが通例になっていた。このときも、コロムビアでは一番の古株である時枝さんのミックスだった。コロムビアのスタジオがお粗末なのは有名で、山木・大仏・今という日本で一番めんどくさいリズム隊で生リズムを録ったときに、ドンカマの音が悪いとオペレーターのアンバイがゴネられたことがあったが、あれもコロムビアのスタジオとエンジニアが気に入らないことの意趣返しだった。ドンカマというのはメトロノーム代わりのリズムマシンで、あんなものに音が悪いもへったくれもない。いつも同じものを使っているのだから。

とまあ、久々に酷いミックスというものを聴いたのでいろんなことを思い出した。2枚目の「勝訴ストリップ」も改めて聴き直してみたが、ボーカルのバランスはさすがに改善されていた。しかしベースがデカ過ぎてほぼ歪んでいる。亀田は意図的にこういう音にしているんだろうけど、クリアな音とは逆行している。ベースはバランス的に大き過ぎると、気の利いたことをやっても気の利いたようには聞こえない。邪魔になるだけ。と僕は思うのだが、どうやら亀田の趣味は違うようだ。

そんな風に久しぶりに音がいいだの悪いだのということを考えていたら、夜中になって遠くでラジオの声のようなものが聞こえ始めた。幻聴だ。自然音の中の倍音から無意識に拾い上げて再構成してしまう。昔薬漬けになって感覚過敏になっていたとき、浴室でシャワーを浴びていたら耳元で物凄くクリアにラリー・カールトンの「ルーム335」のイントロが聞こえてびっくりしたこともあった。浴室は音が反響するので倍音が多いから。

と書きながらときおり耳鳴りまでする今日このごろ。

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