6月11日、土曜日。
日中、外はまるで真夏のように暑かった。夜になって家中の窓を全開に。
例によって何やら夢を見て目が覚めるとまだ7時台だったので二度寝した。すると、次に目が覚めたのは10時半過ぎだった。今日は午後に母を一時帰宅させることになっている。昼頃にスーパーに行って母に食べさせるクロワッサン(パンが食べたいと盛んに言うので)とかシュークリームとかを買ってくる。二時前に母を迎えに行った。
最初はいつものように茶の間の縁側の籐椅子に母を座らせていたのだが、何しろ今日は前述のように暑かったので茶の間の冷房を初めて入れた。母は紅茶に砂糖を入れてくれというので、大分前に砂糖を買っていて正解だった。自分では使わないから。母はマーガリンを塗ったクロワッサンを美味しいと言って食べた。
縁側は家の中でも一番暑いところなので、なんだかずっと縁側に座らせておくのは気の毒な気がして台所のテーブルに移動。最近母はとみに口数が減っているので何を話せばいいのか自分でもよく分からなくなってくる。何か音楽をかけようとノートPCでアマゾンのプライムラジオのクラシックを流した。最初に流れてきたのはベートーベンだった。ピアノソナタ。次もベートーベンで「運命」。その次にかかったのはラフマニノフのヴォカリーズ。この曲が流れ始めたときに母がトイレに行きたいと言ったので連れていった。それからバーバーの「弦楽のためのアダージョ」。
黙って母を台所に座らせているのもなんだなと思って、最近の母の唯一の趣味である習字をやらせようと思った。二階の自室から硯と墨と半紙を持ってくる。母は黙々と墨を磨る。磨り終わると、半紙にまず自分の名前を書き始めた。母は習字を習っていたので字が上手だ。最初の一枚目は名前ばかりを書き連ねた。二枚目の半紙には「世界」と母は書いた。なんで「世界」なんだろうと僕は思った。たぶん先日特養の習字の時間にお題として出たんだろうなと思う。世界がいくつも半紙の上に現れる。次に「星の世界」と書く。たぶん習字のお題はこれだ。「星の世界」と母は何度か書く。それから僕の名前を書く。なんだか僕も習字を書いてみたくなり、筆で自分の名前を書いてみた。硯で磨った墨で毛筆で字を書くのはたぶん高校生のとき以来だと思う。とにかく、何十年振りかだ。僕は字を習ったことがないのでなんちゃってでしか書けない。母はそれでも上手だという。そのうち4時半近くになったので、母を特養に送り届ける。習字を書いている間にようやく母は笑顔を見せてくれた。
夕食後、BSでJリーグの優勝争いの大一番、浦和対鹿島の試合を見る。優勝争いの大一番といっても暫定1位の川崎は既に勝っており、例え2位の鹿島が勝ったとしても川崎が勝ち点は1つ多い。一方3位の浦和はACLの関係で残り試合が2試合多い。5万1000人を超える観客を集めたこの試合、緊迫したいい試合になった。どちらかミスした方が負けというような、息の抜けない試合。0-0で迎えた後半、先にミスしたのは浦和の方だった。宇賀神のパスミスをカイオが拾ってドリブル、カイオが右を猛然と駆け上がった柴崎にパスすると、柴崎はダイレクトでクロスを上げそれを金崎が押し込む。金崎は前半2本のシュートを2回ポストに当てていたが、3度目はゴールになった。その後浦和が攻め込む時間帯が続くも、シュートが枠を外れたりバーに嫌われたり、あわやというゴール前の混戦でもゴールを割ることが出来ない。鹿島の守備は終始集中力を切らさなかった。すると途中交代で入った鈴木優磨が倒されPK、これを鈴木が決めて鹿島が2点のリード、これで試合は決まった。とにかく面白い試合だった。鹿島びいきの僕にとっては。その後もしばらくは勝利の余韻に浸る。
何故かはわからないけれど、今日はずっと日曜日のような気がしていた。何故だろう?